現場で受け継がれてきた言葉を、今の世代に残しておきたい。そんな備忘録のような連載が【現場の言葉】です。
今日のテーマは、ちょっと大きいです。「プロとアマの違いって、何だろう」。
正直に言うと、私も若い頃はこれがよく分かっていませんでした。真面目にやっているつもりではあったのですが、経験も浅くて、たぶん心のどこかに甘えもあったのだと思います。「まだ若手だし」「まだ覚えている途中だし」と、自分で自分に言い訳をしていたところがあったんですよね。
そんな私に、大先輩がはっきりと教えてくれた言葉があります。今でも、ふとした時に思い出します。
大先輩の言葉「給料をもらっていれば、もうプロ」
この連載に何度か登場している大先輩がいます。「無知よりやばいのが無関心」にも出てきた、改善道場で先生をしてくれていた方です。ここではOさんと呼ばせてもらいます。
ある時、Oさんが私に、スポーツを例にして話してくれました。野球だったような気がします。
「プロ野球の選手と、休みの日に草野球を楽しんでいる人。同じ野球をやっていても、この二人は何が違うと思う?」
うまく答えられない私に、Oさんはこう続けました。
「給料をもらっているかどうかだよ。給料をもらっていれば、もうプロなんだ」
趣味で野球をやっている人は、エラーをしても誰にも責められません。それをアマチュア(※ラテン語の「愛する」が語源と言われ、もともとは「愛好家・好きでやっている人」を指す言葉です)と言います。でも、給料をもらって野球をやっているプロ選手は、そうはいかない。お金をもらっている以上、結果に責任がある。手を抜けない。
「お前も今、会社から給料をもらってるだろう。だったらお前は、もうプロなんだよ」
これが、若くて甘えのあった当時の私に、ものすごく刺さりました。
お金をもらう、ということの意味
Oさんの言葉をかみくだくと、こういうことだと思います。
給料をもらうというのは、その対価に責任を持つということ。
これは、一つの考え方ではあります。「プロかどうかは腕前で決まる」という見方もありますし、無償でもプロ顔負けの責任感で打ち込む方もいます。報酬の有無は、あくまで一つの目安にすぎません。それでも、「給料をもらった時点で、もう覚悟のスイッチを入れる」という出発点としては、すごく分かりやすいんですよね。
そして、ここが大事なところなのですが――。
お客さんから見れば、こちらが若手だろうと、初心者だろうと、関係ないんです。
自分の中では「まだ入って数年だから」と思っていても、相手からすれば「会社の人」「お金を払って仕事を頼んでいる相手」でしかありません。「新人なので大目に見てください」は、こちら側の都合であって、お客さんには関係のない話なんですよね。
この感覚に若いうちに気づけたのは、本当にありがたかったと思っています。
私の実践 ― 「分かりません」で終わらせない
当時の私は、まだお客さんのところへ出張に行ったことはありませんでした。でもOさんは、「いつかお前も外に出る。その時のために」と、かなり広く、深く教えてくれました。
たとえば、出張先でお客さんから問い合わせを受けたとき。分かるものは、その場ですぐに答える。これは当たり前ですよね。
問題は、分からないものに当たったときです。Oさんに言われたのは、こういうことでした。
- 「分かりません」で終わらせない。 ごまかして適当なことを言うよりはマシですが、それだけでは仕事になっていない。
- 「調べてから、あるいは確認してから、すぐお伝えします」ときちんと対応する。そして、本当にすぐ動いて、すぐ返す。
分からないこと自体は、若手なら当然あります。それを恥じる必要はありません。でも、分からないものをそのまま放り出すか、責任を持って調べて返すか。ここにプロとアマの差が出る、ということなんだと思います。
そしてもう一つ、Oさんがよく言っていた言葉があります。
「お前は、会社の看板を背負って、代表として行くんだ」
出張先では、お客さんから見れば私が「その会社の人」そのものです。私の対応一つで、会社全体の印象が決まってしまう。だからこそ、信用を得られるような行動をしないといけない。一人の若手の振る舞いが、会社の信用につながっている。そう教わりました。
大げさに聞こえるかもしれませんが、これは出張に限った話ではないんですよね。社内で機械に向かっているときも、結局は同じだと、今の私は思っています。

プロの仕事とは、安全で確実で、信用される仕事
ここからが、この連載でいちばん伝えたいところです。
プロだからこそ、安全と品質には絶対に手を抜けない。
給料をもらってやっている仕事で、雑な作業をしたらどうなるか。雑な仕事は、事故につながります。そして、不良品につながります。「まあいいか」で飛ばした確認が、自分や仲間のケガになる。「たぶん大丈夫だろう」で流した工程が、お客さんの手元での不具合になる。
趣味なら、失敗しても自分が困るだけです。でもプロの現場では、自分の手抜きが、人の安全や会社の信用にまで響いてしまうんですよね。
だから私は、プロの仕事をこう捉えています。
- 安全であること。 自分も仲間も、ケガをさせない・しない。KY(危険予知)で先回りして危険を潰しておく。
- 確実であること。 分からないことを放置せず、調べて、確認して、確かなものを返す。
- 信用される仕事であること。 会社の看板を背負っている自覚を持つ。
この連載で書いてきたことと、全部地続きなんですよね。「無知よりやばいのが無関心」で書いた「自分の仕事に関心を持つ」こと。「怪我と弁当は手前持ち」で書いた「自分の身は自分で守る」こと。「仕事は見て盗め」で書いた「自分から学びを取りに行く」こと。そして「挨拶と掃除」で書いた、土台を大事にすること。
結局どれも、「給料をもらっている以上、もうプロなんだ」という一本の芯から伸びている気がしています。
若手の方へ、そして自分への戒めとして
今これを読んでくださっている中に、まだ現場に入って間もない方がいるかもしれません。
覚えることだらけで、毎日いっぱいいっぱいだと思います。私もそうでした。だから「いきなり完璧なプロになれ」なんて言うつもりはありません。Oさんも、私を脅すようには言いませんでした。分からないことは、一緒に調べていけばいい。
ただ、「自分はもう給料をもらっている。だからプロなんだ」という覚悟のスイッチだけは、早めに入れておいて損はないと思うんですよね。そのスイッチ一つで、同じ仕事でも向き合い方が変わってきます。
そして、これは若手の方だけの話ではありません。何年やっても、慣れてきた頃にこそ甘えが出るものです。私自身、現役のベテラン側になった今でも、Oさんのあの言葉を時々思い出しては、自分の襟を正しています。
給料をもらっている私たちは、もうみんなプロです。プロだからこそ、安全に、確実に、信用される仕事をしていきたいですね。
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以上、ご安全に!!


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