【現場の言葉】「仕事は見て盗め」── 学生と社会人の、いちばんの違い

「仕事は見て盗め」学生と社会人の、いちばんの違い アイキャッチ 現場の言葉

新しい人が現場に入ってくる時期になると、私はいつもこの言葉を思い出します。

「仕事は見て盗め」

ちょっと怖い言い方に聞こえるかもしれません。でも私は、社会に出るときにいちばん背中を押してくれた言葉だと思っています。今日はこの言葉を、できるだけ前向きに、私なりの受け取り方で書いてみます。

「見て盗め」ってどういう意味?

昔の職人さんの世界では、手取り足取り教えるより、「先輩の手元を見て、自分で覚えろ」という育て方も多かったようです。技は“教わる”より“盗む”もの、とよく言われたそうです。(このあたりは諸説あるみたいですが)

今は、もっと恵まれた時代になりました。マニュアルがあって、教育担当がついて、ていねいに教えてくれる現場が増えています。それはとてもいいこと。

ただ、この言葉の芯にあるのは「自分から取りに行け」という姿勢で、そこは今も昔も変わらないなあ、と私は思っています。

学生と社会人で、いちばん変わったこと

学生のころ、私は気づいていませんでした。

学校では、お金(授業料)を払って“教えてもらう”のが当たり前でした。先生は教えるのが仕事で、わからなければ何度でも聞けた。手を挙げて待っていれば、順番が回ってきた。

社会人になると、これがくるっと逆になります。

こっちは給料をもらう側。会社は、仕事をしてもらうためにお金を払ってくれている。教えてくれるのは、本来は“おまけ”みたいなもので、当たり前ではなくて、ありがたいこと。

——あ、ひとつだけ。安全に関わる教育だけは別です。あれは会社が必ずやらなきゃいけない決まり(労働安全衛生法)で、“おまけ”ではありません。そこは遠慮なく、受けて当然のものとして教わってください。

私もこの“当たり前じゃない”に、最初から気づけていたわけではありません。でも、今もこうして現場に立っていると、毎日のように思い知らされます。この感覚に気づけると、見える景色がちょっと変わります。

学生と社会人の違いの図解。学生は授業料を払って教えてもらう側、社会人は給料をもらって自分で取りに行く側。

そういえば、ゲームの攻略も変わった

ちょっと話がそれますが、最近よく思うことがあって。

私が子どものころは、ゲームの攻略って、自分の周りの世界だけで何とかするものでした。攻略本はあったけれど、すぐに答えにたどり着ける手段は、今ほど多くはなかったんです。だから友達と「あそこ、どうやって進んだ?」と情報を出し合ったり、行き詰まったら何度も試して、自分で抜け道を見つけたり。遠回りだらけだったけど、あの“自分で考える時間”が、今思うとけっこう楽しかったんです。

今は違いますよね。スマホでちょっと調べれば、最適解がすぐ出てくる。迷う時間も、失敗する時間も、ぐっと減らせる。これはこれで、すごく便利でいいことだと思います。私もしょっちゅう調べるし、頼れるものには遠慮なく頼らせてもらいます。

ただ、ふと思うんです。“答えがすぐ手に入る”のと、“自分で答えにたどり着く”のは、似ているようで、身につき方がちょっと違うなあ、と。

仕事も同じで。今は調べればたいていの答えが出るし、聞けば教えてもらえる。それを使わない手はありません。でも、もらった答えを「なんでこうなるんだろう?」と一度だけ自分の頭で考えてみると、不思議とちゃんと自分のものになる。あの遠回りも、形を変えた“見て盗む”だったのかもしれません。

便利な道具は大いに使う。そのうえで、自分の頭もちょっと動かす。この“二段構え”が、結局いちばん強いんじゃないかなと思っています。

でも、これは“説教”じゃないんです

ここで「だから最近の若い子は受け身でダメだ」なんて言うつもりは、まったくありません。

むしろ逆で。今はちゃんと教えてくれる、いい時代です。教育がていねいになったのは、現場が安全に・確実になってきた背景のひとつでもあると思います。だから、教わるときは遠慮なく、たっぷり教わっていい。

私が言いたいのは、そこに“自分から一歩”を足すと、ぐっと伸びるし、何より仕事が面白くなる、ということだけです。

自分から取りに行く人は、こういう人

現場で「この人、伸びるなあ」と思う人には、共通点があります。

  • わからないことを、わからないままにしない(聞ける)
  • 教わったことをメモして、次は自分で動いてみる
  • 先輩が作業しているとき、手元を見ている(これがまさに“見て盗む”)
  • 「なんでこうするんですか?」と、理由まで聞ける

難しい才能の話じゃなくて、ぜんぶ“姿勢”の話。だから、誰でも今日からできます。

自分から取りに行く人の4つの姿勢。聞ける・メモして動く・手元を見る・理由まで聞く。

正直に言うと、私自身もいまだに毎日“盗ませてもらってる”側です。新しい機械や新しいやり方が入れば、先輩からも、年下の人からも、見て、聞いて、覚える。現場にいるかぎり、これに終わりはないなと思っています。

いちばんもったいないのは「無関心」

ひとつだけ。

教わるのを待つのもいいけれど、いちばんもったいないのは、目の前の仕事に興味を持たないことだと思っています。

興味さえあれば、人は勝手に「なんで?」「どうやって?」と聞きに行くものです。逆に、私自身も関心が薄いままだと、どれだけていねいに教わっても、右から左にすり抜けてしまうなと感じます。

この「無関心」の話は、実は安全とも深くつながっているので、別の記事でじっくり書いています。あわせて読んでもらえたら → 【現場の言葉】無知よりやばいのが無関心

まとめ ── 教われるうちに、ちょっとだけ自分から

  • “見て盗む”=先輩の手元を見て、自分から取りに行くこと
  • 教えてもらえるのは、当たり前じゃなくて、ありがたいこと(※安全の教育だけは会社の義務で別)
  • 今はいい時代だから、遠慮なく教わっていい
  • そこに“自分から一歩”を足すと、世界が変わる

最初は誰だってわからないことだらけ。私もまだ毎日盗ませてもらってます。だから、新しく社会に出る人も、いま現場でがんばっている人も、肩の力を抜いて、でも目だけはちょっと光らせて。

あわせてどうぞ!

 

 

この連載「現場の言葉」の他の記事は、こちらの一覧からどうぞ。現場で受け継がれてきた言葉を、私なりに少しずつ書きためています。

以上、ご安全に!!

コメント

タイトルとURLをコピーしました