先日、久しぶりに安全標語を考えました。AI(ChatGPT)と一緒に一句練ってみたら、思っていたより深い作業になったので、そのやり取りの流れをご紹介します。
前の職場で毎年恒例だった「安全標語、一人一句」。正直、しんどかった
前の職場では、年に1回、安全標語を一人一句出す募集がありました。たしか労働組合がやっていた気がします。毎年のことで、ネットで検索して見つけた例文を、少しモジって出していたような気もします。
実は、この「AIと標語を作る」という話は、以前のAIと一緒にKYシートのたたき台を作った話でも触れていました。指差呼称の声かけ・標語づくりの章で「安全週間の標語やポスター文言のたたき台にも使えます」とさらっと書いた一文を、今回はまるごと掘り下げます。
今の職場に標語の募集はありません。それでも先日、「家族が待っている、ということが伝わるフレーズを入れたい」というお題が自分の中に浮かんできて、久しぶりに一句作ってみたくなりました。
この記事でわかること
- AIに「荒い候補をたくさん出してもらう」ブレストの進め方
- 五七五の川柳調に寄せ直した、私自身の”注文”のやり取り
- すぐ使えるコピペ用プロンプトと、使う前の注意点
豆知識:短い標語も、実は”著作物”になり得る
本題に入る前にひとつだけ。昔のモジりが直ちに違法だったという話をしたいわけではないのですが、「例文を少しモジる」のはよくある話だと思います。ただ、短い標語やキャッチフレーズも、表現に個性があれば著作物として認められることがあります。有名な判例では、あるチャイルドシートの交通標語をめぐって著作物性は認められたものの、表現がそっくりそのまま盗用されたとまでは言えないとして侵害は否定されました。つまり「多少似ていても即アウトというわけではない」一方で、「そっくりそのまま」に近いほど危ない、ということです。だったら、せっかくなので今回は自分の言葉で作ってみよう、と思いました。
AIに、荒い候補をたくさん出してもらう

まず私が実際に投げたのは、こんなお願いでした。(※実際のチャットでは「毎年、標語を一人一句出すことになっていて」という書き出しで送りましたが、今の職場には募集がないため、この記事では実際の状況に合わせた書き出しに直して掲載しています。)
安全標語のたたき台を、一緒に考えてほしいです。
私は金属加工の工場で働いています(具体的な会社名や製品名は伏せます)。前の職場では毎年、安全標語の募集がありました。いまの職場にはないのですが、久しぶりに一句作ってみたくなりました。
今回、込めたい芯があります。「家族が待っている」ということが伝わるフレーズにしたいんです。安全に気をつける理由を、規則だからではなく、家に帰りを待っている家族がいるから、という気持ちの部分で表現したいと思っています。
条件はこんな感じです。
・短くて、現場で声に出しやすいこと
・五七五(17音)にはこだわらなくて大丈夫です
・交通安全標語や他社の入選作など、有名な既存の標語の言い回しをそのまま真似するのは避けたいです
まずは方向性を絞らず、荒い候補を10〜15本くらい出してもらえますか。禁止形・呼びかけ形・合言葉形・数字を使う形など、方向性はできるだけ散らしてほしいです。各候補に「なぜこの方向にしたか」も一言添えてもらえると助かります。
返ってきたのは15本。理由も一言ずつ添えてくれたのですが、長くなるので標語部分だけ並べます。(各候補の一言解説は中略)
- 今日も無事に、家族のもとへ
- そのひと手間が、家族への約束
- 急ぐ手を止め、待つ顔を思う
- 無理をしないで、ただいまを言おう
- 守る安全 待ってる家族
- 家族の笑顔へ、安全作業
- 慣れた作業ほど、帰る人を思い出す
- 「大丈夫」より、もう一度確認
- 一秒止まる。ずっと家族と笑うため
- ゼロ災で帰ろう、待つ人のもとへ
- 家族に届ける、今日の無事
- 帰るまでが、今日の仕事
- 危ない近道、家族から遠回り
- 手順を守る。待つ人を守る。
- 今日の確認、明日の団らん
数が出ると、方向性の幅がよく見えてきます。禁止形もあれば合言葉形もあり、数字を使ったものまで。この中でも「そのひと手間が、家族への約束」「急ぐ手を止め、待つ顔を思う」「無理をしないで、ただいまを言おう」の3つが気になったので、朝礼でパッと言えるくらいの長さにさらに磨いてもらいました。
「やっぱり川柳のリズムのほうが馴染みがある」——ここが今回、一番の学びでした
磨いてもらった案を眺めていて、あることに気づきました。今の案はどれも今どき風の短い一言なのですが、自分が現場で見慣れている標語は、だいたい五七五のリズムだったんです。そこで、こんな注文を出しました。
ありがとうございます。眺めていて気づいたのですが、私はやっぱり五七五の川柳のような形のほうが馴染みがあります。現場に貼ってある標語も、だいたいあのリズムなんですよね。『家族が待っている』が伝わる芯はそのままで、五七五調(多少の字余りはOK)の候補を10本ほどお願いできますか。これまでと同じく、有名な既存標語の言い回しの真似は避けてほしいです。
AIの一発目の提案をそのまま採用せず、自分が使い慣れているリズムに寄せ直す。この「注文をつけ直す」ところこそ、丸投げと相棒に手伝ってもらうことの一番の違いだと感じています。返ってきた10本がこちらです。(解説は省略し、標語部分のみ)
- 急ぐ手を ひとまず止めて 待つ笑顔
- その確認 家族に交わす 今日の約束
- 無理をせず 笑顔で帰る 家族のもと
- ひと手間が 守る明日と 家の灯り
- 慣れた手を 止めて浮かべる 待つ家族
- 急ぐより 無事に帰ろう 待つ人へ
- ひと呼吸 その先にある ただいまを
- 今日もまた 無事を届ける 家族へと
- 手順守り 笑顔で交わす ただいまを
- 待つ顔を 胸に浮かべて 安全作業

声に出して磨いて、最終候補5本
「急ぐ手を ひとまず止めて 待つ笑顔」「ひと呼吸 その先にある ただいまを」「無理をせず 笑顔で帰る 家族のもと」の3本が気になったので、実際に声に出したときの言いやすさという観点でさらに磨いてもらいました。その中から、声に出してしっくりきた5本を私が残しました。
- 急ぐ手を ひとまず止めて 待つ笑顔
- 急ぐ手を いったん止めて 待つ笑顔
- ひと呼吸 その先にある ただいまを
- 無理をせず 笑顔で帰る 家族のもと
- ひと手間を 惜しまず帰る 家族のもと
一句、決まりました
最終的に選んだのは、これです。
「急ぐ手を」で作業中の動きが浮かび、「ひとまず止めて」で安全確認につながり、最後の「待つ笑顔」で家族の存在がふっと出てくる。声に出したときの区切りも自然で、これなら自分の言葉として言えると感じました。
最後に、出来た句が既存の標語とそっくりになっていないか検索して確かめました。実在の安全標語の公開資料をあわせて400本以上確認した範囲では、この句と同一の表現は見当たりませんでした。「家族」や「笑顔」「帰る」といった言葉自体は定番なので、みなさんも自分の句ができたら、提出前に一度検索してみることをおすすめします。実は今回の最初の15本の中にも、「ゼロ災でいこう」という業界の定番の掛け声に寄った案がひとつ混ざっていました。AIは”聞き覚えのある言い回し”を平気で出してくることがあるので、この最終チェックだけは省かないでくださいね。
せっかくなので、コピペ用プロンプトを置いておきます
以前のリスクアセスメントのたたき台を作ったときのプロンプトと同じ考え方で、穴埋め式にしました。実際のチャットでそのまま使った文言ではなく、今回の一連のやり取りをもとに汎用テンプレートとして組み直したものです。[ ]の中身を自分の職場に合わせて書き換えてから使ってください。
※職場への提出や外部のコンテストへの応募に使う場合は、先に募集要項や社内のルールを確認してください。生成AIの利用そのものを禁止している募集もあります(くわしくは、この後の注意点で)。
あなたは、製造現場の安全標語づくりを何年も見てきた、ベテランの安全衛生担当です。 「賞をとる言葉」よりも「現場の人が実際に覚えて口にする言葉」を大事にしています。 これから、私の職場の安全標語の"たたき台"を、一緒にブレストする形で手伝ってください。 ────────────────────── 【私の職場の情報】 ■業種・作業の種類:[ 例:金属加工工場の機械オペレーター など。会社名・工場名は書かない ] ■今、現場で気になっていること:[ 例:整理整頓が甘くて足元に物が置きっぱなしになりがち など。具体的な事故の詳細や関係者が分かる書き方は避け、一般化して書く ] ■標語のテーマ・お題(あれば):[ 例:「家族が待っている」「熱中症」など自由に ] ■形式の希望(あれば):[ 例:五七五の川柳調で/字数は15文字以内で など。決まっていなければ空欄でOK ] ────────────────────── 【守ってほしい条件】 ・交通安全標語・過去の入選作・「ゼロ災でいこう」のような業界の定番の掛け声など、有名な既存の言い回しをそのまま使わない ・既存の標語と重複していないことを保証したり、「完全にオリジナルです」と断定したりしない(最終確認は私自身が検索して行います) 【お願いしたいこと】 ① 切り口(方向性)を3〜4グループ設定し、グループごとに合計10〜15本の荒い候補を出してください。各候補には一言だけ「なぜこの方向にしたか」を添えてください。 ② 私が見落としていそうな切り口があれば指摘してください。 ③ ここでいったん止めてください。私が気になる候補を2〜3本選びます。 ④ 私が候補を選んだら、「五七五にしたい」「もっと短く」などの注文を聞いて、それぞれ3案ほどに磨き直してください。 ⑤ 最終案をあなたが決めるのではなく、最後は私が選べる形で提示してください。 なお、出力の【冒頭】に、必ず次の注意書きをそのまま入れてください。 「これはあくまで案出しのたたき台です。この中から実際にどれを使うか、どう言葉を変えるかは、あなた自身の実感と職場のルールに沿って決めてください。他人の標語や過去の入選作、公式スローガンとそのまま同じ表現にならないよう、最後は必ずご自身で確認してください。」
一回目の出力が「思っていたのと違うな」と感じたら、そこで終わりにせず、五七五のリズムにしたい・字数を短くしたい・もっと柔らかい言い方がいいなど、自分が使い慣れた形を伝えてもう一度お願いしてみてください。今回も、その「注文をつけ直す」やり取りがいちばん効きました。
使う前に、これだけは守ってほしいこと
- 丸投げにしない。最終的にどの言葉で出すかは、自分で決める
- 出来た句は、提出前に一度検索して、他人の標語や過去の入選作と被っていないか確認する
- 部署名や実際の出来事の詳細など、職場の内部情報は入れない。気になる出来事は一般化してぼかす
- 提出先のルールを確認する。文字数や表記のルールは職場ごとに違う
- 外部のコンテストの中には、生成AIで作った作品を無効とする規約を設けているところもある(たとえば中央労働災害防止協会の公募がそうです)。事業場内の提出と外部コンテストへの応募は別物と考えて、規約はよく確認する

まとめ:標語はAIと”型”を作って、最後の一言は自分で選ぶ
今の職場に標語の提出先はまだありませんが、いつか機会があれば、この一句を使ってみたいと思っています。
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以上、ご安全に!!




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