【保存版】指差し呼称とは?効果と、形だけにしない「まずここから」の4場面

指差し呼称は、まずはここから。重点を決めて必ず、そして習慣に。通路の角で右手で指差し呼称をする作業者 工場生活

前職では、指差し呼称(ゆびさしこしょう)が会社のルールで、ほぼ全員がやっていました。「指差呼称」と書かれることもありますが、中身は同じです。文化になっていたと言っていいくらいです。基本のやり方となぜ効くと言われているかは、以前「KY(危険予知)とは?」で一通り書きました。なので今回はその先へ。形だけにしないためにどうするか。まず、どこから始めるか。後輩にどう伝えるか。今日はここを一段具体的に掘り下げます!

この記事でわかること

  • 指差し呼称を、まずどこから始めるか
  • 「形だけ」にしないための考え方と、後輩への伝え方
  • 私が後輩に「まずはここから」と伝えている4つの場面
  • 私が「効いた」と感じた場面と、なぜ効くのか

指差し呼称、おさらいだけ短く

指差し呼称は、確認する対象をしっかり見て、声に出しながら指で差し、その指を耳元に戻して「本当にいいか」を確かめ、最後に「ヨシ!」と声に出して振り下ろす、という一連の動作です。細かい所作の型は「KY(危険予知)とは?」に書いたので、今回は要点だけ。チーム全員で行動目標を声をそろえて確認する「指差し唱和」とは別物で、指差し呼称は作業のときに一人で行う確認、という整理は変わりません。

指差し呼称のやり方。対象を見る、右手の人差し指で声に出しながら指を差す、指を耳元に戻して確かめる、人差し指で対象を差したままヨシと振り下ろす

効果の裏付けとしてよく紹介されるのが、鉄道総合技術研究所の芳賀繁さんらが発表した室内実験です。厚生労働省の職場のあんぜんサイトでも、何もしないときに比べて誤りが約6分の1に減ったと紹介されています。数字の詳しい中身と限界は「KY(危険予知)とは?」に書きましたので、気になる方はそちらへ。ここで押さえておきたいのは、条件のそろった実験室での一つの実験の数字だということです。他の実験ではそこまで差が出なかったものもあるので、「やれば必ず6分の1」と思い込まないほうが実態に近いと、私は捉えています。

「形だけ」になっていくとき

指差し呼称は、続けているうちに形だけになりがちです。声がだんだん小さくなる。指だけ動いて、声が伴わなくなる。慣れた作業ほど、いつの間にか省くようになる。現場でよく見る変化です。

芳賀繁さんらの論文にも、「あまりにも頻繁な指差呼称を強制することによって,かえって確認動作が形骸化してしまった例もある」と書かれています。鉄道総合技術研究所も、「現場では指差喚呼の形骸化が危惧されているようです」として、効果を体感してもらう教育の研究を紹介しています。効かせたいなら、いきなり全部を求めず、まず「ここから」を決めることが先だと思います。

まずは、この4つの場面から

前の職場では、指差し呼称は、広く当たり前にやるものでした。ただ、新人や後輩にいきなり全部を求めると、たぶん続きません。だから今の職場で後輩に教えるときは、「まずはここから、ここは必ず」と、4つの場面を決めて伝えています。

まずは、この4つの場面から。機械の起動・停止・切替、クレーン・玉掛けの合図と吊り荷の下の確認、通路の角・フォークリフトとの交差、電源・エアー・残圧の確認
  • 機械の起動・停止・切替。動き出す瞬間だからです。
  • クレーン・玉掛けの合図と、吊り荷の下に人がいないことの確認。落ちれば大きな事故になります(玉掛けの記事にも書きましたが、吊っているものは落ちるものです)。クレーンや玉掛けは、動作の節目ごとに指差し呼称で確かめるのがよいと、私は考えています。ここでは、その中でも外せない場面を挙げました。
  • 通路の角、フォークリフトとの交差。人や車と出会う場所です。
  • 電源・エアー・残圧の確認。電気や空気の圧力は、目に見えません。止まっていると思って手を入れるのが、一番危ないところです。

この4つに共通しているのは、事故につながったときに重大になりやすい場面だということです。ここだけやればいい、という意味ではありません。まずここを確実にやって、それをきっかけに、ほかの場面にも習慣として広げていく。その順番のほうが、形だけになりにくいと思います。

この4つは、今の職場で私が後輩に最初に伝えている例です。みなさんの現場でも、事故やヒヤリがあった作業から始めてみてください。

向かないのは、秒単位で動く作業の最中

指差し呼称が向かない場面もあります。芳賀繁さんらの論文は「反応時間は指差呼称をすることにより増大するので,秒単位の迅速さが求められる作業には不適であることは言うまでもない」と書いています。「KY(危険予知)とは?」で紹介した「一瞬の即応が必要な作業には向かない」という話と、根っこは同じです。とっさの判断が要る作業の最中は、指差しをする代わりに、目と意識をいつも以上に対象へ向けておきましょう。

それ以外の場面なら、大きな動作でなくても構わないと、私は思っています。指を小さく差して、小さな声でも、見て・指して・確かめる、という流れは作れます。林業・木材製造業労働災害防止協会の資料にも、腕や指の動かし方について「『型』にこだわる必要はなく,各々の現場で話し合って,最も適切なものをきめます」とあります。

職場のルールや作業標準で指差し呼称が決まっている作業は、そのルールが優先です。

効いた、と感じた瞬間

私自身、指差し呼称に助けられたと感じた場面は、一度や二度ではありません。よくあったのが、通路の交差点やトイレの出入り口です。角の先に目をやり、指を差して声に出す。その一瞬で、出てきた人や、横から来たフォークリフトに気づいて止まれたことが、何度もありました。

もうひとつは、機械に入れるプログラムを編集する仕事です。打ち終わったあと、画面を指差しで見直すと、小数点の位置、座標の符号、工具番号、送り速度、原点の設定といったミスが見つかります。どれも、気づかずに機械を動かせば、刃物や機械、加工する物を傷めかねないものです。機械の前だけでなく、画面の前でも効くんだと実感しました。

どちらにも共通しているのは、指して声に出すことで、一度「間」ができること。その一呼吸のあいだに、「あれ?」と手が止まる。いつもと違う何かに、そこで気づけます。これが、指差し呼称の一番の効きどころだと今も思っています。

もちろん、必ず気づけるわけではありません。プログラムの編集なら、頭が煮詰まっているときや、「入れたつもり」になっているときは、見直しても通り過ぎてしまうことがあります。それでも、指差し呼称があったから気づけた、ということは、やはり多いと思っています。

後輩に教えるときにやっていること

新人や後輩に指差し呼称を教えるとき、私が意識しているのは3つです。ひとつは、「まずはここから」と場面を決めて伝えること。全部を一度に教えると、続きません。もうひとつは、自分が危なかった話を添えること。ただ手順を教えるより、実感が伝わりやすい気がしています。そして最後に、口で説明するだけでなく、自分がやって見せること。見て覚えてもらうほうが早いですし、教える側が省いていたら説得力もありません。

ここは、こういう理由で危ない。だから必ず。そこまで伝えれば、後輩は自分で考えて続けてくれる。そう思っています。

今の職場では

今の職場では、KYミーティングの最後に、指差し唱和をしています。声に出してみんなで確認する、という芯は変わりません。

数字と法律の位置づけ

指差し呼称そのものを名指しで義務づける法律はありません。多くの職場が、KY活動などの安全活動の一環として自主的に取り入れている実践です。ここで紹介した「約6分の1」という数字も、条件のそろった実験室での結果ですし、これをやれば事故がゼロになる、という意味でもありません。最終的には、職場のルールと現場の判断に委ねられる部分です。

指差し呼称は、いきなり全部に付けようとすると形だけになりやすい。危ないところは数えきれないから、まず外せない場面を決めて、そこは欠かさない。続けるうちに、ほかの場面にも自然と手が動くようになる。指して、声に出すことで一度止まれる。その「間」で気づける。

まとめ

  • 指差し呼称は、対象を見て、指して声に出し、「本当にいいか」を確かめてから「ヨシ!」と言う確認。
  • いきなり全部を求めると、形だけになりやすい。だから、外せない場面を決めてそこは欠かさず、続けるうちに広げていく。
  • 後輩には、まずはここから、と場面を決めて、自分の話を添えて、やって見せる。

今日からできることは、ひとつだけ。「まずはここから」と思う場面を、1つ決めてみてください。それだけで、形だけの掛け声とは違うものになるはずです。

 
【主な出典】厚生労働省 職場のあんぜんサイト「指差呼称」/芳賀繁・赤塚肇・白戸宏明(1996)「『指差呼称』のエラー防止効果の室内実験による検証」産業・組織心理学研究9(2)/鉄道総合技術研究所「指差喚呼のエラー防止効果体感教育」/林業・木材製造業労働災害防止協会「『指差し呼称』の進め方(林業)」。

指差し呼称は、やればやるほど安全になる魔法ではありません。外せない場面を決めて、そこは欠かさない。続けるうちに、ほかの場面にも手が動くようになればいいんだと思います。

以上、ご安全に!!

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