【実演・プロンプト付き】SDS(安全データシート)の読み方|16項目をAIと一緒に読み解いてみた

SDS(安全データシート)のファイルを開いて確認する工場作業員のキャラクターと、AIチャット画面が見えるタブレット。SDSは16項目のうち3つから、AIと一緒に読む AI活用

薬品棚に並んだファイル。あの中の一冊、開いたことはありますか。

洗浄剤や切削油、接着剤――工場で扱う薬品には、たいてい「SDS(安全データシート)」という書類が付いています。危険性や取扱い方法をまとめた大事な書類ですが、正直、存在は知っていても読んだことはない、という方も多いのではないでしょうか。私の職場にもSDSはあります。

この記事でわかること

  • SDS(安全データシート)16項目のうち、現場でまず見るべき項目
  • 厚労省のモデルSDSを使い、AI(相棒)と読み解いてみた実演
  • AIの答えをそのまま現場のルールにしてはいけない理由

SDSとは、そもそも何か

SDS(安全データシート。Safety Data Sheetの略)は、化学物質の危険性や取扱い方法、応急措置などをまとめた書類です。JIS規格で定められた16項目の形式で、危険・有害な化学物質を「譲渡・提供する側」に交付が義務づけられており(労働安全衛生法第57条の2)、受け取った職場の側でも、必要なときにすぐ確認できるようにしておくことが大切です。業種や規模を問わず、対象の薬品を扱う事業場では「化学物質管理者」の選任も義務化されており(令和6年4月から)、対象の化学物質は順次追加されています。

扱う側からすると、ルールがよく変わる分野でもあります。前の職場で技術職をしていた頃、法律の改正で対象が広がったときに、SDSをそろえる作業をしたことがあります。メーカーに問い合わせたり、商社を通してかき集めたり。薬品を置いている場所ごとに備え付ける、という職場の運用になって、大変でした。棚に並んだファイルは、そうやって誰かが集めたものです。

安全データシートは、読まれるために置いてあるのに、読まれないまま置いてある。

だからこそ今回は、AI(相棒)と一緒に、実際のSDSを1枚読み解いてみることにしました。

今回は、厚労省のモデルSDSを使いました

今回の実演で使ったのは、私の職場にある実物のSDSではなく、厚生労働省「職場のあんぜんサイト」公開のイソプロピルアルコール(2-プロパノール)のモデルSDSです。実物は会社の特定や著作権の問題があるため、公的機関の資料を使いました。項目の並びや16項目という形式は、私の職場のSDSと同じです。ただし、並びは同じでも、中身は製品ごとに異なります。

往復1|現場が見るべき3項目は?

モデルSDSの全文(16項目すべて)を貼り付けて、こう聞いてみました(AIの答えの中の「IPA」は、イソプロピルアルコールの略称です)。

工場で洗浄に使う薬品のSDS(安全データシート)を貼ります。私は工場の作業者です。この16項目のうち、現場で作業する人が特に見ておくべき項目を3つ選んで、それぞれ「なぜ」を一言ずつ、専門用語には短い説明を付けて教えてください。

AIの答えです。

工場で実際に洗浄作業をする人、という目線なら、私はまず「2・7・8」の3項目を優先します。SDSを最初から全部覚えるより、「何が危ないか → どう扱うか → 何で身を守るか」の順で見ると実務に落とし込みやすいです。

SDS項目 このIPAで見るところ なぜ
2.危険有害性の要約 「引火性の高い液体及び蒸気」「強い眼刺激」「蒸気を吸わない」「換気」「保護眼鏡・手袋」など その薬品で何が起こり得るかを最初に把握するため。
7.取扱い及び保管上の注意 火気・スパーク禁止、蒸気を吸わない、換気の良い場所で使用、容器の取扱い、保管方法 普段の作業で「やってよいこと・ダメなこと」が分かるため。
8.ばく露防止及び保護措置 換気、保護手袋、保護眼鏡、呼吸用保護具、管理濃度200 ppm 自分を守る設備と保護具を具体的に確認できるため。

※表にある「ばく露(ばくろ)」とは、薬品の蒸気を吸い込んだり、皮膚に触れたりして、体がさらされることです。

SDS16項目のうち、まず見るのはここ。2.危険有害性の要約(何が危ないか)、7.取扱い及び保管上の注意(どう扱うか)、8.ばく露防止及び保護措置(何で身を守るか)。事故が起きたときは4.応急措置と6.漏出時の措置

※今回のモデルSDSで、AIが選んだ3項目です。薬品や作業によって、見るべき項目は変わります。

(中略)とくに引火点12℃なので、「冬だから火災は大丈夫」という感覚では扱えません。
なお、3つには入れませんでしたが、4.応急措置もかなり重要です。実際に目に入った・吸い込んだ・皮膚についた時に慌てないよう、作業前に一度だけでも4項を確認し、洗眼器などの場所を知っておくのがおすすめです。(中略)

私自身は、意図的にSDSを見る時間を作るようにしています。それでも、今回のモデルSDSで「まず見るなら2・7・8番」と順番をつけてもらえると、現場で働く私たちに直結する項目はどれか、優先順位が明確になった気がしました。

往復2|手袋と保護めがねは、どこを見ればいい?

続けて、保護具の選び方を聞いてみました。

手袋と保護めがねは、このSDSのどこを見れば「何を使うべきか」が分かりますか。項目番号と根拠の文を引用して教えてください。

はい。手袋・保護めがねを選ぶときに最優先で見るのは「8.ばく露防止及び保護措置」です。
手袋:8.ばく露防止及び保護措置 → 保護具 → 手の保護具
根拠の文:「適切な保護手袋を着用すること。」
ただし、このモデルSDSでは手袋の材質までは指定されていません。(中略)
保護めがね:8.ばく露防止及び保護措置 → 保護具 → 眼の保護具
根拠の文:「適切な眼の保護具を着用すること。」「保護眼鏡(普通眼鏡型、側板付き普通眼鏡型、ゴーグル型)」
(中略)今回のSDSから読み取れる範囲を端的に言うと、「手袋は必要だが材質は不明」「保護めがねは必要で、普通眼鏡型・側板付き・ゴーグル型が例示されている」です。(中略)

「材質までは分からない」と自分の限界を率直に言ってくれたのが印象的でした。ただ、現場としては「では、手袋はどうする?」で止まるわけにはいきません。まず製品ごとのSDSを確認し、そこに材質まで書かれていなければ、手袋メーカーが出している耐薬品性の一覧表も見ます。そのうえで、作業の内容や時間も含めて、職場の化学物質管理者や保護具着用管理責任者に相談し、職場として薬品と作業に合うものを決めます。AIが答えられない部分は、人が調べて埋める部分です。

往復3|目に入った・皮膚に付いた・こぼした時は?

もしものときの対応についても、尋ねてみることにしました。

目に入ったとき・皮膚に付いたとき・こぼしたとき、それぞれ最初にすることをSDSの記載どおりに、3行で。

目に入ったとき:水で数分間、注意深く洗う。
皮膚に付いたとき:皮膚を速やかに洗浄する。
こぼしたとき:漏洩物に触れたり、その中を歩いたりしない。

これは今回のモデルSDS(2-プロパノール)から、AIに「最初にすること」を3行で抜き出してもらった実演です。事故対応の全体ではありません。実際には「4.応急措置」「6.漏出時の措置」の続きと、自分の職場の緊急時ルールまで確認してください。薬品によって成分も対応も異なります。

往復4|AIに「足していない?」と聞いてみた

ここまでの答えを見て、ふと気になりました。AIの説明には、SDSの本文そのままではない言葉も混ざっていた気がしたのです。そこで、もう一段踏み込んで、こう聞きました。

あなた(AI)の説明で、SDSに書いていないことを足していないか、自分で確認して教えてください。

確認しました。直前の3行回答は、SDSに書かれている内容だけで、余計な行動は足していません。
一方、それ以前の私の説明には、SDS本文そのものではない補足がいくつかありました。
「GHSは世界共通の基準で分類・表示する仕組み」→ 一般的な解説で、今回貼っていただいたSDS本文にはこの説明はありません。(中略)
「冬だから火災は大丈夫という感覚では扱えない」→ 引火点12℃から私が説明として加えた表現で、SDSの記載そのものではありません。(中略)
「作業前に洗眼器の場所を知っておく」→ 私からの安全上の提案です。SDSには「洗眼器と安全シャワーを設置すること」とはありますが、「場所を確認すること」とは書かれていません。
(中略)今回のように「SDSの読み方」を確認する場合は、今後 ①SDSに書いてあること/②そこから読み取れること/③私からの実務的な補足 を分けてお答えするのが一番正確ですね。

AI自身がここまではっきり「これは私の補足です」と申告してくれたのは、少し意外でした。ただし、これはこちらから「足していないか」と聞いたから出てきた答えです。聞かなければ、AIの補足を「SDSに書いてあること」だと思ったまま、読み流していたかもしれません。

ここが、今回いちばんの学びでした。AIの説明には、SDS本文そのものではない補足も混ざっていました。その補足が正しいかどうかは、また別に裏付けをとる必要があります。SDSに書いてある事実と、AIが持っている一般的な知識が、区別されないまま話されていたのです。AIの答えをそのまま現場のルールにせず、「SDSに書いてあることか、AIの補足知識か」を分けて受け取る視点が必要だと感じました。そのためには、AIにきちんと聞くこと、そして返ってきた答えをSDSの本文と照らして確かめること(ファクトチェック)が、セットで必要です。

AIの答えと、SDS・職場のルールの位置関係。AIの答えは読み解きの参考・気づきのきっかけ、SDSと職場のルールは実際の作業で確認する基準

コピペ用プロンプト

今回の往復1をもとにした、穴埋め式のプロンプトです。

職場のSDSをAIに貼り付ける前に、勤務先の生成AI利用ルールや情報持ち出しのルールを必ず確認してください。入力が認められていない資料は貼り付けません。入力できる場合も、会社名・部署名・取引先名・管理番号など、読み解きに不要な情報は伏せてから使います。

工場で[ 例:洗浄・脱脂・切削 など ]に使う薬品のSDS(安全データシート)を貼ります。私は工場の作業者です。この16項目のうち、現場で作業する人が特に見ておくべき項目を3つ選んで、それぞれ「なぜ」を一言ずつ、専門用語には短い説明を付けて教えてください。

[ ここにSDSの本文を貼る(職場のルールで入力が認められているものだけ。会社名など読み解きに不要な情報は伏せる) ]

最後に、あなたの説明の中でSDSに書いていない補足を足していないか、自分で確認して教えてください。

AIの答えが返ってきたら、「これはSDSに書いてある?」と聞き返してみてください。

現場でのSDSの使い方、3つ

  • 自分の職場で扱う薬品のSDSが、どこに保管されているか確認する
  • 「4.応急措置」「6.漏出時の措置」など、事故が起きたときに関わる項目も、作業前に一度読んでおく
  • 保護具(手袋・保護めがね・呼吸用保護具)は「8.ばく露防止及び保護措置」を見る

化学物質の取扱いは、10月1日〜7日の全国労働衛生週間の実施要綱にも重点のひとつとして挙げられています。日程などはこちらの記事にまとめています。

まとめ

安全データシートは、読まれるために置いてあるのに、読まれないまま置いてある。

今回はAIと一緒に、モデルSDSを読み解いてみました。今回のモデルSDSで、AIが「まず見る3項目」として選んだのは2・7・8番でした。事故のときに関わる4・6番も、事前に確認しておきたいところです。自分のためだけでなく、隣で働く仲間に何かあったときに動けるかどうかも、ここを知っているかで変わります。ただし、必要な項目は薬品や作業によって変わるので、この3項目だけで終わりではありません。AIの答えは、読み解きの参考や気づきのきっかけです。気になったら「足していない?」と聞き返し、SDSの本文で確かめます。実際の作業では、まずSDSと職場のルールを確認し、分からないことは職場の担当者にも相談します。

棚の奥のファイルを、まず一度開いてみてください。どこに何が書いてあるか知っておくだけでも、いざというときに確認しやすくなります。

現場の安全対策全般を振り返りたい方はこちら → 【保存版】工場・現場の安全対策まとめ

以上、ご安全に!!

→ あわせてどうぞ!

 

 

 

参考

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