「明日、うちの職場に巡視があるかもしれない」――そう思っている方に、まずお渡ししたいものがあります。巡視の前に5分でできる見直しリストです。10月1日から7日の全国労働衛生週間の本週間には、事業者などによる職場巡視が実施事項として明記されており、普段より巡視が入りやすい時期だと思います(週間そのものの説明はこちら)。私は前の職場と今の職場、どちらでも巡視を受けてきました。今思うのは、巡視は「指摘されないため」に身構えるものではなく、「普段からできているか」を確かめる機会だということです。その根っこにあるのは、巡視は、自分も一緒に働く仲間も、けがをせず健康に働き続けるための活動だという、当たり前の前提です。
この記事でわかること
- 巡視の前に5分でできる見直しリスト(8項目)
- 前職で「指摘が目的」になっていた時期と、そこから変わった経緯
- 直前に片付けるか、普段からやるか――受け止めが変わったきっかけ
巡視前の5分チェック、8項目
巡視の有無に関わらず、次の8つを自分の目で見直してみてください。指摘の有無ではなく、「いつも通りにできているか」を確かめるためのリストです。

- 通路・足元:部材や工具、削りくずが通路にはみ出していないか、歩いて確認します。転倒・つまずき対策でも触れた通り、通行の妨げになりやすい場所だからです。
- 表示・掲示:白線や標識、注意書きが薄れたり、物の陰に隠れたりしていないか確認します。表示が読めなければ、そこにあるはずのルールが伝わらないからです。
- 保護具:ひびや汚れがなく、着用ルール通りに使えているか確認します。必要なときに、本来の保護性能を発揮できる状態にしておくためです。使用期限があるものについては、この機会に期限も見直します。保護眼鏡は、傷が多い状態で使っている人をよく見かけます。傷の具合をチェックして、必要なら交換しましょう。
- 薬品・道具の保管:薬品や工具、書類が決められた場所に戻っているか確認します。決められた場所に戻っていれば、取り違えや通路への放置も防ぎやすくなるからです。
- 配線:通路を横切るコードに養生(ようじょう、保護カバーで守ること)がされているか、傷んでいないか確認します。断線やショートによる火災のほか、足を引っかける原因にもなるからです。
- 照明・換気:切れている照明がないか、換気扇や吸排気口の前が物でふさがれていないか、普段と違う暑さ・寒さがないか確認します。見えにくい、息苦しいは、そのまま作業のしにくさとケガの元になるからです。
- 救急箱・非常口:救急箱の場所と使い方が分かるか、非常口や消火器の前に物が置かれていないか確認します。いざという時に、すぐ使える状態にしておく必要があるからです。救急箱の中身の使用期限も、あわせて確認しておきましょう。
- 非常停止装置:前や周りに物がなく、必要なときに迷わず押せる状態か、目で確認します(実際に作動させる動作確認ではありません)。ひとりで作業しているときほど、迷わず押せることが重みを持つからです。
この8項目は、地方公務員安全衛生推進協会のチェックリストと、愛知県産業資源循環協会の研修資料にある重点項目や現場でよく指摘される点を参考に、される側の言い方でまとめたものです。直前の5分だけ見返すためのものではなく、普段の状態を確かめるためのチェック表として使ってもらえればと思います。巡視のたびに新しい視点を1つ足す工夫は、取り組み例でも紹介しています。
公的なテンプレートを使いたい場合は、一部の労働局が無料で公開している安全衛生チェックリストがあります。たとえば青森労働局の「安全衛生チェックリスト(金属製品製造業)」(PDF)は、金属製品製造業向けの資料で、はい・いいえで答える形です。業種が合う職場なら、印刷してそのまま使えます。ただ、配線や照明、救急箱・非常口は独立した項目になっていないので、上の8項目とあわせて見るのがよいと思います。
前の職場の巡視は、月1くらいでした
前の職場では、月に1回くらいのペースで巡視がありました。回っていたのは、安全衛生の担当者や衛生管理者、産業医、管理職や工場長、そして安全衛生委員会からの現場代表でした。そこに、現場の若手も加わっていました。新しい目で見てもらうためという理由で、たとえ的外れなことを言っても頭から否定しない、というのが前職のルールでした。法律の決まりではありませんが、同じ考え方は業界団体の巡視研修資料にも見られました。
「指摘することが目的」になっていた時期がありました
ただ、前職の巡視には、途中で空気が変わった時期があります。ある時期、指摘することそのものが目的になっていました。指摘そのものが悪いわけではないのですが、無理に探してまで指摘しようとすると、言葉の選び方ひとつで、受け取る側にはいじめのように響いてしまうことがあります。私は当時、その違和感を職場に伝えました。

正直に言うと、最初のうちは巡視を取り締まりのように感じていました。ただ、前職では最後の方になって、良かったところもまとめてもらえるようになりました。それからは、助かる、気づきになる、という感覚に少しずつ変わっていきました。
直前に片付けるか、普段からやるか
前職では、巡視の直前になると白線の掃除をしていました。今思えば、本末転倒だったと思います。ただ、当時の若手だった私たちの間で、普段からやればいいのではないか、という空気に変わっていきました。
現職では、特別なことをするというより、基本的にはいつも通りです。いつ見られても大丈夫なように、という意識を普段から持っています。現職の巡視の形も紹介します。KYミーティング(危険予知活動の短い打ち合わせ)のあとに、司会を務める技能職と班長が現場を回ります。加えて週に1回くらい、職場で安全衛生責任者と呼ばれている担当者が1人で巡視しています。
巡視の前提と例外
巡視の法律上の決まりを、短く整理します。ここで挙げる3つの役職のうち、頻度が条文にはっきり書かれているのは、衛生管理者(少なくとも毎週1回)と産業医(少なくとも毎月1回)の2つです。産業医は、次の2つがそろえば2か月に1回でよいとされています。毎月、衛生管理者の巡視結果と、衛生委員会などで審議を経て事業者が提供すると決めた情報を受け取っていること。そして、事業者の同意があることです。安全管理者には、頻度を定めた条文がありません。
これらはすべて事業者や担当者に向けた決まりです。巡視される側の労働者に義務があるわけではありません。「若手を入れる」「良い点も見る」といった工夫も、法律で決まっているわけではなく、私の前職での運用や、業界団体の研修資料に見られる考え方です。最終的な判断は、それぞれの職場のルールと担当者に委ねられています。
まとめ
巡視の前に慌てて片付けるのではなく、普段からいつも通りでいられるように整えておくこと。指摘だけに目を向けず、良いところも含めて、今の職場を映す機会だということ。そして巡視は、指摘する人のためでも、される人のためでもなく、自分と仲間が無事に働き続けるための活動だということ。5S3定の記事でも「アラ探しになるとギスギスする」と触れましたが、その答えの一つが、普段からやる、良い点も見る、という今日の話だと思っています。
以上、ご安全に!!
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