今度、職場巡視で回る側になった。そんな方に、まずお伝えしたいことがあります。10月1日から7日の全国労働衛生週間の本週間には、事業者などによる職場巡視が実施事項として明記されていて(週間そのものの説明はこちら)、普段より巡視で回る機会が増える時期だと思います。私は前の職場で、若手のころも、委員になってからも、事務所側になってからも回る側に加わってきました。今の職場でも、KYミーティングの司会をするときは、自分も一緒に回ります。巡視は、自分と、一緒に働く仲間が、けがをせず健康に働き続けるための活動です。アラ探しの場ではありません。できていないことは、普段こちらが把握しきれていないことでもあります。そう思うと、見るものも伝え方も変わってきます。この記事は、回る側が巡視の前に決めておく5分と、指摘の伝え方の話です。
この記事でわかること
- 巡視の前に決めておく5分(2つ)
- 責めずに指摘を伝える、言い換えの例文
- 良い点を記録に残す、若手と一緒に回るという運用の話
巡視前に決めておく5分、2つだけ
巡視を受ける側が見直す物のチェックリストは、9月30日公開の別の記事にまとめます。回る側の5分は、中身が違います。物を見るのではなく、進め方を決めておく5分です。

- 今日見るテーマを1つ決める:毎回すべてを見きるのは難しいので、今日はここを重点的に見る、と1つだけ決めておきます。10月の目標や季節の注意点から選ぶと決めやすくなります(10月の目標の例文集はこちらです)。
- 前回の指摘を見返しておく:直っているか、直したことで別の問題が出ていないかを確認します。地方公務員安全衛生推進協会の資料(地方公務員の安全衛生を専門とする団体が、病院向けにまとめた資料の一節です)にも「過去の巡視で指摘した箇所がどう改善されているか、改善したことで新たな問題が発生していないかを確認します」とあり(出典)、巡視のたびに繰り返し確認したい視点です。初めてで前回の記録が手元にないときは、①のテーマを1つ決めるところからで大丈夫です。
テーマと前回の指摘、この2つだけです。
テーマ選びの材料に、見る項目の一覧が欲しいときは、一部の労働局が無料で公開している安全衛生チェックリストが参考になります。たとえば青森労働局の「安全衛生チェックリスト(金属製品製造業)」(PDF)は、はい・いいえで答える形式です。業種別に作られたものなので、自分の職場に合わせて読み替える前提で使ってください。全部を見ようとせず、「今月はこの項目だけ」とテーマを1つに絞る材料にするのが、5分の使い方に合います。
回るときは、責めない・聞く・その場で直す
できていないことは、普段こちらが把握しきれていないことでもあります。だから、まず責めません。なぜそうなっているかを聞きます。そして、通路にはみ出した物を一緒に寄せるなど、機械の稼働に関わらない、安全にできる範囲のことは、一緒に直してしまいます。良いやり方かは分かりませんが、まず直したうえで、本人にも次から気をつけてもらいます。指摘や報告が目的ではないからです。もちろん、見つけたことの記録はきちんと残します。指摘すること自体を目的にしない、という意味です。
巡視のやり方を解説した資料にも、近い考え方があります。労働者健康安全機構(JOHAS)の解説記事(産業医を中心に、職場巡視のポイントを解説した記事です)には「定められた保護具未着用など明らかな指摘事項は職場同行者や衛生管理者と相談してその場で指摘すること」とあり(出典)、地方公務員安全衛生推進協会の資料にも「明らかな不具合やすぐに改善できるものは、その場で現場の管理監督者や作業者に直接助言し、改善します」とあります(病院向けの調査報告書ですが、巡視の心得として業種を問わず参考にできる記述です)。
一方で、その場で直して終わり、にはできない話もあります。同じ場所で同じことが繰り返されている。置き場や手順といった、しくみの側にも原因がありそうだ。そう感じたときは、その場の手直しで済ませず、記録に残してきちんと伝え、担当者や職場と協力して直していくのがよいと思っています。責めないことと、言わないことは、別の話です。
指摘の言い換え例文
どう言うかで、伝わり方が変わることもあります。例えば、こんな言い換えができます。

- 「なんでこうなってるの」 → 「ここ、どういう流れでこうなりましたか」
- 「またはみ出してる」 → 「この部材、通路にかかっているので一緒に寄せましょう」
- 「保護眼鏡、傷だらけじゃん」 → 「この傷だと見えづらくないですか。交換の在庫がありますよ」
- 「また片付いてないの」 → 「ここ、戻す場所を一緒に決め直しませんか」
どれも実際のやり取りではなく、一般的な言い方の例です。5S3定の記事で「アラ探しになるとギスギスする」と触れましたが、その答えのひとつが、この言い換えだと思っています。
巡視そのものの指摘ルールではありませんが、厚生労働省委託の安全衛生教育マニュアルにも、危険予知訓練(KYT)の進め方として「問題点の指摘は自由に行い、他のメンバーの批判は避けるようにして」という記述があります(出典)。巡視の前後にあるKYミーティングでも、同じ考え方が生きています。
良い点も記録に残す、若手と一緒に回る
前の職場では、巡視の記録・報告に「良かった点」の欄ができ、朝礼や委員会で紹介され、掲示でも共有されるようになりました。こうして少しずつ、良い点が職場に伝わるようになっていきました。巡視のやり方を解説する資料でも、同じ考え方が繰り返し出てきます。JOHASの解説記事には「Good Practiceについて積極的にいい点として指摘する」という項目(良い取り組みのことです)があり、地方公務員安全衛生推進協会の資料にも「改善すべき部分だけではなく、工夫がされていたり他の職場のお手本になるようなことについてもきちんと評価します」とあります。法令の義務ではありませんが、巡視という行為に共通する考え方として勧められています。
若手を巡視メンバーに入れる運用も、前の職場で私と上司が提案し、会議で決まったものでした。新しい目で見てもらうことが狙いなので、指摘が少しずれているように感じても、まず受け止める。そういう前提の運用でした。
記録と、そのあと
私は、記録には見た事実だけを書き、誰がやったかは書かないようにしています。書き方は、それぞれの職場のルールに従います。用紙のチェックやコメント、写真を持ち帰って、委員会や会議で対策を決めます。
前の職場には、指摘することそのものが目的になっていた時期がありました。指摘や報告が目的になると、直すことが置き去りになりやすい。巡視は、直すためのものです。地方公務員安全衛生推進協会の資料にも「実施後のフォローが重要です。職場巡視の実施結果は、巡視後すぐに作成し、現場に報告しなければなりません」とあります。同じ資料では、施設や設備の改善が必要で経費や時間のかかるものは、衛生委員会に報告するとともに、管理者や監督者と具体的な対策を話し合うことが重要だとも書かれています。
巡視の前提と例外
ここに書いたのは法律ではなく、私の経験と、巡視の進め方を解説する資料の考え方です。巡視する側のうち、有資格者である衛生管理者には、少なくとも毎週1回の巡視が法令で決まっています(安衛則11条)。産業医など他の役職との頻度の違いは、9月30日公開の別の記事で整理します。最終的な判断は、それぞれの職場のルールと担当者に委ねられます。
巡視は、アラ探しの場ではありません。テーマを1つ決めて回り、できていないことは責めずに聞いて、その場で直せるものは一緒に直す。しくみの問題は記録に残して伝え、協力して直していく。良い点も記録に残す。指摘や報告が目的ではなく、自分と仲間が無事に働き続けるための巡視。次に回る番が来たら、そのどれか1つからでいいと思います。
以上、ご安全に!!
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