雨が続いて、洗濯物も気持ちもなんだかジメジメ。「この時期、体が重いな」「汗をかいても乾かなくて気持ち悪いな」と感じることはありませんか。私もまさにそうで、梅雨どきの現場では、汗がいつまでもシャツに残ってまとわりつく感覚に毎年やられます。
じめじめして気温もそこまで高くない梅雨どきは、一見すると熱中症とは縁が遠そうに思えます。ところが実は、この「じめじめ」こそが熱中症の落とし穴。真夏のカンカン照りよりも前、梅雨から梅雨明けにかけての時期は、熱中症が増える要注意のタイミングなんです。
まだそこまで暑くないのに、なぜ危ないのか。今回はその理由をしっかり科学でひも解いてから、今日からできる対策まで、順を追ってお話しします。理由が分かると、行動が変わります。
なぜ梅雨の熱中症は増えるのか

理由①:体がまだ暑さに慣れていない(暑熱順化)
私たちの体は、暑さに少しずつ慣れていく仕組みを持っています。これを「暑熱順化(しょねつじゅんか)」と呼びます。暑さに慣れてくると、汗をかく量や皮膚を流れる血液の量が増えて、体の熱を外に逃がしやすくなります。つまり「夏仕様の体」になるわけですね。ただ、この慣れには個人差はありますが、数日から2週間ほどの時間がかかります。
ここが落とし穴です。梅雨明け直後は、多くの人がまだこの「夏仕様の体」になりきれていません。そこへ急に暑さがやってくるので、体がついていけずリスクが高くなるのです。
やっかいなのは、涼しい日が数日続くと、せっかくの慣れが薄れてしまうこと。梅雨は気温が上がったり下がったりするので、体が慣れかけてはリセットされる、を繰り返しがち。いわば「リセット」された状態で梅雨明けの暑さを迎えるので、特に注意が必要です。
理由②:湿度が高くて、汗が蒸発しにくい
汗は、ただ出れば涼しくなるわけではありません。汗が「蒸発する」ときに体の熱(気化熱)を奪ってくれて、はじめて体が冷えます。打ち水で地面が涼しくなるのと同じ原理ですね。
ところが湿度の高い梅雨は、空気がすでに水分でいっぱい。汗をかいても蒸発しにくく、体の熱がうまく逃げません。汗をかいているのに体温が下がらず、熱がこもってしまうのです。冒頭の「汗がいつまでも乾かなくて気持ち悪い」あの感覚は、まさに体が冷えにくくなっているサインでもあります。
ちなみに、熱中症の危険度を表す「暑さ指数(WBGT)」という指標は、気温だけでなく湿度をとても重視してつくられています(屋外の暑さ指数の計算では、湿度に関わる部分が大きく見込まれています)。だから気温がそれほど高くなくても、湿度の高い梅雨は危険。エアコンのない室内でも起こりうる、ということです。
自分の住まいや職場の暑さ指数を具体的に計算してみたい方は、暑さ指数(WBGT)を自分で計算できるツールも用意しています。住まいや職場の数値を確かめてみてくださいね。
梅雨の晴れ間・梅雨明けが特に危ない
危ないのは「梅雨明け直後」だけではありません。梅雨の合間にのぞく「晴れ間」も要注意です。じめじめした曇り空が続いたあと、急にカラッと晴れると、暑さ指数が一気に跳ね上がります。体がまだ慣れていないところへ、いきなり本気の暑さ。これは危険な組み合わせです。
数字でも、この時期の急増がはっきり出ています(年によって梅雨明けの時期は違うので、西暦をはっきり書いておきますね)。
- 2024年は、梅雨明け前の週の熱中症による救急搬送が6,381人だったのに対し、梅雨明け後の週は9,401人(約1.5倍)、さらにその翌週は12,955人(約2倍)へと急増しました。
- 2025年は5〜9月の救急搬送が10万510人にのぼり、調査を始めた2008年以降ではじめて10万人を超え、過去最多となりました。6月だけでも17,229人で、これも月別で過去最多。2025年は梅雨明けが記録的に早かった年でもあります。
梅雨明けの時期は年によって大きく違うので「何月が危ない」とは一概に言えません。だからこそ、暦ではなく「急に暑くなった日」を合図に、気を引き締めるのが大切です。
今日からできる対策
① 暑熱順化で「夏仕様の体」に(無理のない範囲で)
暑くなる前から、意識して少し汗をかいておくと、体が暑さに慣れやすくなります。軽い運動や、湯船につかる入浴などが効果的とされています。日本気象協会が紹介している目安は、たとえばこんな具合です。
- ウォーキング:1回30分・週5日
- 軽いジョギング:1回15分・週5日
- サイクリング:1回30分・週3日
- 入浴:湯船につかるのを2日に1回
効果が出るまでの目安は数日〜2週間ほどです。ただし、これはあくまで健康な人を前提とした一例。体調や持病に合わせて、無理のない範囲でが大前提です。持病のある方は、始める前にかかりつけのお医者さんに相談してくださいね。
② 水分・塩分は「のどが渇く前」から、こまめに
水分補給は、のどの渇きを感じてからでは少し遅いくらい。渇く前から、こまめにとるのがコツです。そして大事なのが、汗を多くかいたときは水だけでなく塩分も一緒にとること。
水だけを大量に飲むと、血液中の塩分が薄まって「低ナトリウム血症」(筋肉のけいれんなどを起こすことがあります)につながることがあります。「とにかくたくさん飲めばいい」ではない、というのがポイントです。
普段の予防にはスポーツドリンクなどが手軽な目安です(数値でいうと、日本スポーツ協会の目安は0.1〜0.2%の食塩水、ナトリウム40〜80mg/100mlほど)。経口補水液は塩分が多めなので、体調をくずしたときの一口に、という温度感で。ただし高血圧や、腎臓・心臓に持病のある方は塩分のとりすぎに注意が必要なので、お医者さんに相談してください。
③ エアコンは冷房と除湿で、湿度も下げる
梅雨の対策では、温度を下げるだけでなく湿度を下げるのがポイント。冷房だけでなく除湿(ドライ)も上手に使って、室内のジメジメを減らしましょう。扇風機を併用すると、空気が動いて汗も蒸発しやすくなります。「もったいないから」と我慢しがちですが、体が一番。特に節電を気にされる高齢の方は、我慢せず上手に使ってくださいね。
④ 服装・休憩、そして家族への声かけ
服装は、通気性のよい涼しいものを。屋外や暑い職場で過ごす方には、空調服(ファン付き作業着)も頼りになります。作業や外出の合間には、こまめに休憩をとりましょう。私も現場では、暑い日ほど短い休憩を意識してはさむようにしています。空調のない現場で私が実際に「効いた」と感じた工夫は、【実体験】工場の熱中症対策にまとめているので、よければあわせてどうぞ。
そして特に気をつけたいのが、高齢の方と子どもです。暑さや体の変化に気づきにくいことがあるので、まわりの家族の見守りや「水分とった?」のひと声かけが、何よりの予防になります。
「あれ?」と思ったときの応急処置

- 涼しい場所へ移動する … 風通しのよい日陰や、冷房の効いた室内へ。
- 体を冷やす … 衣服をゆるめ、首回り・脇の下・足の付け根などを冷やします。太い血管が通っていて、効率よく熱を逃がせる場所です。
- 水分・塩分を補給する … 自分で飲める状態なら、水分と塩分を。
ここで大事な注意点です。意識がはっきりしない人に、無理に水を飲ませてはいけません。水が気道に入ってしまう危険があります。その場合は体を冷やしながら、すぐに救急車を呼んでください。
意識がない、自分で水が飲めない、休んでも症状がよくならない——そんなときは、ためらわず救急車(119番)を呼びましょう。
気になる症状があるときや、症状が改善しないときは、ためらわず医療機関の受診や119番を。「大げさかな」と迷うくらいで、ちょうどよいと私は思います。
今日からできることまとめ
- のどが渇く前から、こまめに水分をとる
- 汗を多くかいたときは、水だけでなく塩分も一緒に(水だけ大量はNG)
- 予防にはスポーツドリンクなど、不調時に経口補水液(持病のある方は医師に相談)
- 屋内は冷房だけでなく「除湿」も使い、温度と湿度の両方を下げる
- 通気性のよい涼しい服装で、こまめに休憩
- 暑熱順化は無理のない範囲で(持病のある方は医師に相談)
- 高齢者・子どもは特に注意し、家族で声をかけ合う
- 具合が悪い人が意識もうろうなら、水は飲ませず冷やしながら119番
梅雨のジメジメは、体にとって思った以上に手ごわい相手です。でも、理由が分かっていれば、こわがりすぎる必要はありません。暑熱順化で体を慣らし、水分と塩分をこまめにとって、エアコンで温度も湿度も下げる。一つひとつは小さなことですが、積み重ねが熱中症のリスクをぐっと下げてくれます。
今年の夏も、無理せず一緒に乗り切っていきましょう。
以上、ご安全に!!


コメント