夏の工場、あの暑さは経験した人にしかわからない
夏の工場で働いたことがある人なら、わかってもらえると思います。朝、現場に入った瞬間にむわっとした熱気に包まれて、まだ何もしていないのに汗がにじむ。昼を過ぎる頃には作業着が背中に張りつき、頭がぼーっとしてくる。あの感じです。
「暑いのは毎年のことだから」と我慢して働いている人は、今でもたくさんいると思います。でも、熱中症は気合いでどうにかなるものではありません。倒れてからでは遅いのです。
この記事では、私が実際に空調のない工場で働いていたときの経験をもとに、現場で明日からできる熱中症対策をまとめました。難しい話は抜きにして、「これだけはやっておこう」というところに絞ってお伝えします。
「空調なし工場」で働くということ
私が前にいたのは、空調のない工場でした。
不思議なもので、気温そのものがピークになるのは昼の13時ごろのはずなのに、体感で一番こたえるのは午後2時から3時ごろでした。建屋全体が朝から熱を溜め込んで温まりきり、機械や壁から放射される熱(輻射熱)がムワッと全身を包んでくる——あの時間帯が本当にきつかったです。機械のそばでは、室温が40℃近くまで上がることもありました。
暑さをしのぐ設備がなかったわけではありません。ただ、先輩にはスポットクーラー、若手は扇風機、という具合で、風の当たる範囲はせまいものでした。機械を操作している最中や段取り作業の最中は、そもそも風が届かないので、汗だくになりながら手を動かすしかありません。しかもスポットクーラーは、機械の基板(精密な電子部品)の熱対策に回っていることも多く、今思えば人間より機械のほうが優先だったのかもしれません(笑)
こういう現場は、今も全国にたくさんあります。だからこそ、「自分の身は自分で守る」意識と、会社側の対策の両方が大事になってきます。
そもそも熱中症ってどういう状態?
熱中症は、暑い環境で体に熱がこもり、体温の調節がうまくいかなくなった状態のことです。軽いうちは「めまい」「立ちくらみ」「大量の汗」「足がつる」といったサインが出ます。
ここで無理を続けると、「頭が痛い」「吐き気がする」「体がだるい」と進み、さらに重くなると「呼びかけに反応しない」「まっすぐ歩けない」「汗が止まってしまう」といった危険な状態になります。こうなったらすぐに救急要請が必要です。
そして、現場の暑さを測る目安として WBGT(暑さ指数) というものがあります。これは気温だけでなく、湿度や輻射熱(地面や機械から出る熱)も合わせて計算する指標で、同じ気温でも湿気が多いと数値が高くなります。「気温はそこまでじゃないのに、なんでこんなにしんどいんだ」という日は、たいていこのWBGTが高くなっています。
WBGTの詳しい読み方や数値の目安については、別の記事でくわしく説明しています。
→ WBGTってなに?2025年6月から職場の熱中症対策が義務化されました!
現場でできる熱中症対策
対策は、「自分でできること」と「会社にやってもらうべきこと」に分けて考えると整理しやすいです。

個人でできること
- 水分はこまめに。のどが渇く前に飲む
のどが渇いたと感じたときには、もう体は水分不足になり始めています。15〜20分おきに一口でも口にする習慣をつけましょう。私の現場では水分補給そのものはいつでもOKでしたが、「裸のペットボトルの持ち込みは禁止」というルールがありました。そこで、ちょうど発売されたばかりのワークマンのペットボトルホルダーに入れて、機械のすぐそばまで持っていっていました。ルールがあるなら、その中で水分を切らさない工夫をするのも大事です。 - 塩分も一緒にとる
汗をたくさんかくと、水分だけでなく塩分も失われます。水だけをがぶ飲みすると、かえって体調を崩すことがあります。塩分タブレットや経口補水液をうまく使いましょう。私のいた職場では、塩分タブレットや飴が休憩室に常備されていました。こうしたものが手の届くところに置いてあるだけでも、「ついで」の補給がしやすくなります。
ただし、高血圧や腎臓の病気などで塩分(ナトリウム)を控えるよう医師から言われている方は、塩分タブレットや経口補水液をとる前に、必ず主治医に相談してください。 - 空調服(ファン付きベスト)を使う
最近は腰や背中にファンがついた作業着が手ごろになりました。私の現場でも、空調服が配られたときは「革命だ」と思ったほどです。汗を一気に乾かして体を冷やしてくれるので、空調なし現場では本当に頼りになります。
個人的におすすめなのは、ベストタイプより長袖タイプです。首と手首(血管が多く、効率よく体を冷やせる場所)から風が抜けるので、胴体も含めて汗が圧倒的に減り、体力の消耗がぐっと抑えられる感覚がありました。ただ長袖は腕に生地がペタペタ張りつくので、アームカバーや長袖のコンプレッションインナーを下に着ると快適です。もちろん、バッテリーの充電はお忘れなく。
空調服についてはこちらでも詳しく紹介しています → 空調服(ファン付き作業着)のススメ!夏の工場や屋外作業では必須です! - こまめに休憩をとる
「キリのいいところまで」とつい無理をしがちですが、暑い日は意識して短い休憩をはさみましょう。少し涼しい場所で体を冷ますだけでも、体の負担はかなり違います。
会社がやるべきこと
- WBGT(暑さ指数)を測る
感覚だけに頼らず、現場の暑さを数値で把握することが第一歩です。測定器は手ごろなものも出ています。 - 涼しい休憩場所を用意する
日陰やエアコンの効いた休憩室があるだけで、体のリセットがまったく違います。水分や塩分もそこに置いておくと取りやすくなります。 - 熱中症についての教育・声かけ
サインの見分け方や、倒れた人を見つけたときの対応を全員が知っておくこと。「無理せず休め」と言い合える雰囲気づくりも、立派な対策です。
空調服が使えない現場もある(溶接など)
ここで一つ、注意点を。空調服はどんな現場でも使えるわけではありません。
たとえば溶接の現場では、空調服のファンが溶接ヒューム(溶接のときに出る細かい煙)を巻き込んでしまうため、使えないことがあります。私のいた現場の溶接屋さんも、空調服は着られませんでした。
代わりに使っていたのが、エアークーラーやボルテックスチューブ(圧縮空気で冷たい風を作る道具)です。ただ、これらは体の一部が局所的に冷えるだけで、全身が涼しくなるわけではありません。冷えている所と暑い所の差も出るので、「これがあるから大丈夫」と過信するのは禁物です。
実際その溶接屋さんは、ツナギも、ヘルメットの下にかぶった防火用の頭巾も、全体が汗で色が変わっていました。最初からそういう色なのかと思うほどの汗の量です。後輩も「無いよりは全然いいけど、やっぱり空調服を着たい」とこぼしていました。それくらい、溶接の現場の暑さは過酷なんです。
意外と危ないのは「ピカピカ晴れ」より「少し曇った日」
これは私が現場で感じていたことですが、カンカン照りでとんでもなく暑い日よりも、少し曇った日のほうが、かえって熱中症になる人が多い気がしています。
おそらく「今日はそこまで暑くないから大丈夫」という油断から、水分や塩分の補給がつい後回しになってしまうのだと思います。実際、私のいた工場でも、他部署で2件、人が救急車で運ばれたことがありましたが、どちらもカンカン照りのピークの日ではなく、曇りの日だったり、夜19時ごろ(残業中)だったりしました。
暑さのピークだけでなく、「ちょっと暑さがゆるんだ日」や「夕方以降」こそ、意識して水分・塩分をとる。これは覚えておいて損はありません。
2025年6月から、会社の「義務」になりました
ここは大事なところです。
2025年6月から、職場の熱中症対策が罰則付きで「義務」になりました。 労働安全衛生規則が改正され、熱中症になるおそれがある作業をさせる会社には、対応の 体制を整えること、いざというときの 手順をつくること、そしてそれを 関係者に周知すること などが求められるようになりました。
つまり、これまで「会社の心がけ次第」だった部分が、「やらなければいけないこと」に変わったということです。
働く側としても、これは知っておいて損はありません。「うちの会社、何もやってくれない」と感じたら、これはもう義務になった話なんだと、一度上司や会社に相談してみる根拠になります。
まとめ|まずはこの1つから
熱中症対策はあれこれありますが、全部を完璧にやろうとすると続きません。まずは、
「のどが渇く前に、こまめに水分と塩分をとる」
この1つだけでも、今日から始めてみてください。それと、空調なし現場で働いている方は、ファン付きの空調服を一着用意しておくと夏の戦い方が変わります。
暑さは毎年やってきます。倒れてからでは遅い。自分の体を守りながら、無理なく夏を乗り切っていきましょう。
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以上、ご安全に!

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