毎年7月になると、工場やお店、工事現場などで「全国安全週間」と書かれたのぼりやポスターを見かけませんか。なんとなく目にはするけれど、「結局なんの週間なの?」という方も多いと思います。 実はこの安全週間、本番は7月1日〜7日ですが、その前の6月1日〜30日は「準備月間(準備期間)」。つまり、この記事を読んでいる今が、ちょうど”仕込み”のベストタイミングなんです。 そして大事なのは、これは「工場や現場で働く人だけの話」ではない、ということ。つまずき・すべりの点検、火の元のチェック、「危なかったね」を家族で共有する習慣——どれも家庭にそのまま通じます。今回は、全国安全週間をやさしく解説しつつ、職場でも家庭でも役立つ”安全のコツ”までまとめてみました。安全週間を知らない方も、職場で関わっている方も、どうぞ気軽に読んでみてください。
まず日程から。6月が「準備」、7月が「本番」
ややこしいので、最初に日付だけ整理しておきます。
| 期間 | 日程 | やること |
|---|---|---|
| 準備月間 | 6月1日〜6月30日 | 点検・見直し・声かけなどの”仕込み” |
| 本週間(本番) | 7月1日〜7月7日 | 安全大会や特別点検など |
ポイントは、7月になってからあわてて準備するのではなく、6月のうちに点検や見直しをしておくこと。安全はイベント当日だけ頑張っても意味がなく、ふだんの積み重ねこそが事故を防ぎます。ねらいは「7日間だけ頑張る」ことではなく、6月の準備 → 7月の本番 → 8月以降も続けるという流れをつくること。だからこそ、6月という準備の月がちゃんと用意されているんですね。
全国安全週間ってどんなもの?
全国安全週間は、働く人のケガや事故をなくすことを目的に、国(厚生労働省)と中央労働災害防止協会(略して「中災防」)が中心になって、毎年全国でいっせいに呼びかけている取り組みです。国・会社・働く人が一体になって安全を見直す、いわば日本中の”安全の総点検週間”ですね。 おどろくのはその歴史です。昭和3年(1928年)にスタートして以来、一度も中断せずに続いていること。戦争や大きな災害があった年も止めず、2026年(令和8年)で第99回を迎えます。来年・令和9年がいよいよ100回目。労働災害をなくす国民運動としては国内で最も長く続いているもので、90年以上、第99回までバトンをつないできたと聞くと、ちょっと身近に感じませんか。それだけ「安全はくり返し意識しないと、すぐ忘れてしまう」ものだということなんですね。
⚠️ ひとつ注意。10月1日〜7日には「全国労働衛生週間」という別の運動もあります。こちらは健康・衛生(健康診断や働く環境)がテーマで、7月の「安全」週間とは別物です。7月=安全(ケガや事故を防ぐ)、10月=衛生(健康を守る)、と覚えておくと迷いません。
2026年のスローガンは「みんなで育てる安全職場」
安全週間には毎年テーマ(スローガン)があり、その年に大切にしたいメッセージが込められています。 2026年(令和8年度)のスローガンは、
多様な人材 全員参加 みんなで育てる安全職場
最近は、ベテランも若手も、外国の方も、年齢も働き方もさまざまな人が同じ職場で働くようになりました。「ベテランだけが気をつける」「新人は言われたとおりに」ではなく、一人ひとりが当事者として、みんなで安全な職場を”育てて”いこうという呼びかけです。 (参考までに、前年・2025年/令和7年度のスローガンは「多様な仲間と 築く安全 未来の職場」でした。年によって少しずつメッセージが変わるのも、安全週間のおもしろいところです。)
「ヒヤッ」「ハッ」を見逃さない——ヒヤリハットの話
ここで、職場でも家庭でも役立つ、いちばん大事な考え方をひとつ紹介します。ヒヤリハットです。 ヒヤリハットとは、ケガには至らなかったけれど「ヒヤッ」「ハッ」とした出来事のこと。階段を踏み外しかけた、子どもが熱いやかんに手を伸ばした、自転車と接触しそうになった——こういう「危なかった」体験は、職場でも日常でも毎日のように起きています。これを放置せず、みんなで共有して直していくのが「ヒヤリハット活動」です。 なぜこれが大事かというと、有名なハインリッヒの法則があるからです。
1件の重いケガの背後には、29件の軽いケガ、そして300件の「ヒヤッとしたけど無事だった」出来事が隠れている(1:29:300)。
これは1930年代にアメリカの安全技師ハインリッヒが、たくさんの労災を分析して示したもの。数字そのものは目安ですが、「大きな事故は突然起きるのではなく、その前に何百回も小さな”ヒヤッ”が積み重なっている」という”氷山の一角”の考え方が大切です。 つまり、300の小さな段階で芽を摘めば、大きなケガを防げる。家庭でも「今、危なかったね」と家族で共有するだけで、同じ事故の芽を一つつぶせます。 そして職場でヒヤリハットを集めるときの最大のコツは、報告した人を責めないこと。責めると誰も出さなくなり、危険がかえって隠れてしまいます。「出してくれてありがとう」で受けとめるのが鉄則です。報告は短くていいし、うまく書けなくてもいい。すぐ出すことが大事で、たった1枚の報告が仲間を守ります。
職場でできること(働く人向け)
ここからは、職場で関わる方への内容です。むずかしく考えなくても大丈夫。準備月間には、こんなことから始められます。
- 職場をぐるっと安全パトロール:通路に物が置きっぱなしになっていないか、コードや床の段差で足元があぶなくないか、床が濡れて滑りやすくなっていないか、機械のカバーが外れていないか
- ヒヤリハットの共有:「ヒヤッとした」「あぶなかった」場面をみんなで出し合う
- KY(危険予知)をやってみる:作業の前にチームで「今日はここが危ないかも」を1回5〜15分、声に出して確認する。最後は指差し呼称で「ヨシッ!」
- 避難経路・消火器の場所の再確認
- 新しく入った人への声かけ:慣れていない人ほど事故にあいやすいので、ベテランから一声かける
- 「急いで」より「安全に」を優先できる雰囲気づくり
スローガンどおり、役職や立場に関係なく”全員参加”で見直すのがポイント。本番の7月には安全大会や特別点検を行いますが、本当のねらいは、6月の準備 → 7月の本番 → 8月以降の継続で、安全を毎日の習慣にすることです。
機械を使う職場なら、ここは特に注意
製造業など機械を扱う職場で多いのが、「はさまれ・巻き込まれ」の事故です。回転する部分に巻き込まれると、一瞬で大ケガにつながります。この準備月間に、ぜひ次の点を見直してください。
- 回る刃物や部品に、手袋・袖・タオルを近づけない:機械に巻き込まれるきっかけになります。刃物が回る機械では、手袋をしないのが基本とされる場面もあります。職場のルールを確認しましょう。
- 機械の掃除・点検・刃の交換は、必ず機械を止めてから:「ちょっとだから」と動いたまま手を出すのが、大ケガの典型です。
これは家庭の電動工具(ミキサー、草刈り機、電動ドリルなど)でも、まったく同じ鉄則ですね。
家庭や個人でもできること
安全週間は職場向けの運動ですが、考え方は家庭でもそのまま使えます。むしろ、家庭の事故予防にこそ役立ちます。特に身近な3つを挙げます。 ① 転倒・つまずきを防ぐ 近年は、働く人のケガ全体で見ると、いちばん多いのが「転倒」とされています(製造業など機械を扱う現場では「はさまれ・巻き込まれ」が最多です)。段差、濡れた床、急ぎ足、スマホ歩き——原因は職場も家庭も同じです。年齢が上がるほど増える傾向があるので、段差をなくす・滑り止め・片づけ・階段では手すりを意識しましょう。玄関や階段まわりの片づけから始めるのがおすすめです。 ② 火の元・コンセント コンセントまわりにホコリがたまっていないか、たこ足配線になっていないか、調理中にその場を離れていないか。 ③ 熱中症対策 暑くなる季節の”事故予防”の代表格です。水分補給のコツは「喉が渇く前に飲む」こと。渇いたと感じた時には、すでに脱水が始まっています。屋外の仕事だけでなく、家事・庭仕事・子どもや高齢者の見守りでも同じ。汗を多くかいたら、塩分も一緒にとりましょう(ただし、塩分を控えるよう医師に言われている方は、その指示に従ってください)。なお、めまいや頭痛だけでなく、意識がはっきりしない・自分で水が飲めないときは、迷わず119番です。 「ちょっと点検してみよう」と思った今日が、いちばんいいタイミングです。

まとめ
最後に、大事なところだけおさらいします。
- 全国安全週間は毎年7月1〜7日が本番、その前の6月が準備月間。2026年(令和8年)で第99回、来年が100回目
- スローガンは「多様な人材 全員参加 みんなで育てる安全職場」
- 10月の「労働衛生週間」とは別物(7月=安全、10月=健康)
- 大切なのはイベントよりふだんの積み重ね。職場でも家庭でも、立場に関係なく”全員参加”で、小さな”ヒヤッ”を見逃さないことが大きな事故を防ぎます
7月を待たず、6月のうちに身のまわりをひとつ点検してみませんか。小さな見直しが、大きな事故を防ぎます。
以上、ご安全に!!
参考:厚生労働省・中央労働災害防止協会(中災防)「全国安全週間」。最新の日程・スローガンは各機関の公式情報をご確認ください。

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