【現場の言葉】人より5分努力しろ|たった5分の差が、10年でどれだけの差になるか

事務所でベテランが若手に「人より5分努力しろ」と語りかけるイラスト 現場の言葉

こんにちは、もこです。

現場で受け継がれてきた言葉を、私なりに少しずつ書きためている連載「現場の言葉」。今回のお話は、前の職場でお世話になった大先輩に教えてもらった一言です。

この大先輩は、連載に何度も登場している方で、前の職場にあった「改善道場(かいぜんどうじょう)」――改善のやり方を集中して学ぶ、研修のような場所――で先生をしてくれていました。ここでは、他の記事と同じく「Oさん」と呼ばせてもらいます。初めて登場したのは『無知よりやばいのが無関心』という記事で、『プロとアマの違い』『うちにしかできない仕事だぞ』にも登場しています。

今回書くのは、そのOさんに教わった一言のおかげで、前の職場でも今の職場でも、ちょっとしたことを続けられるようになった、という話です。

この記事でわかること

  • Oさんに教わった「人より5分努力しろ」という言葉の意味
  • 1日5分の差が、10年でどれくらいになるか計算してみた結果
  • 私が前の職場・今の職場で実際にやっている「5分」

「人より5分努力しろ」

改善道場で、事務所にいたときのことです。補助の指導員の方や、他の同僚もいる場でした。Oさんは「これから長い会社生活で、大事なことを教えてやる!」――そんな前置きで、こう言いました。

「人より5分努力しろ」

私はOさんを尊敬していたので、特に疑うこともなく、素直に聞いていました。決して怒っているような言い方ではありません。そしてOさんはそのあと、ちゃんと理由を教えてくれました。1日5分の差は、1週間で35分。それが1ヶ月で、1年で、10年で……というふうに、単純な掛け算で、やる人とやらない人が積み重ねる時間の違いを教えてくれたんです。

本当に単純な掛け算です。この記事を書くにあたって、10年分まで通して、自分でも計算し直してみました。

1日5分を、10年分計算してみた

1日5分の積み重ねが階段のように大きくなる図。1週間で35分、1ヶ月で約150分、1年で約30時間、10年で約300時間

毎日5分だとすると、1週間で35分。1ヶ月(30日)だと約150分、つまり約2時間半です。1年だと約30時間。10年続けると約300時間になります。8時間を1日として単純に換算すると、約38日分――まるまる1ヶ月以上の「積み重ねた時間」になる計算です。

ちなみに、毎日ではなく出勤日だけ(年間240日くらいとして)で計算し直しても、1年で約20時間、10年で約200時間。8時間勤務にすると約25日分です。

ちなみに、これがもし1日10分だったら、10年で約600時間。1日30分なら約1,800時間――働く時間にして、ほぼ1年分です。そして後でお話ししますが、実際にやってみると、5分におさまらない日のほうが多いんです。積み重ねは、この計算よりもっと大きくなっていきます。ただ、長くやるほどいい、という話ではありません。

自分で計算してみて、思っていたより大きな数字が出てきたことに、あらためて驚きました。1日5分なんて、体感としてはないのと変わらないくらいです。でも10年という単位に伸ばしただけで、まるまる1ヶ月ぶんの、積み重ねた時間の差になってしまう。同じ職場にいて、同じ給料をもらっていても、この積み重ねがあるかないかで、10年後にはっきりと差になっている。Oさんが言いたかったのは、たぶんこういうことなんだと思います。

「5分」は魔法の数字じゃない。「積み重ねるかどうか」の話だと、私は思っています。

すごく腑に落ちて、その日から

この話を聞いたとき、私はすとんと胸に落ちて、今日からでも実践しようと思いました。それまでも「頑張らないと」というような漠然とした気持ちはあったのですが、5分という具体的な数字と、10年という具体的な期間を出されたことで、初めて自分ごととして考えられるようになった気がします。

前の職場でやっていたこと

それから、前の職場では、こんなことをやるようになりました。実際には5分におさまらないものも多かったと思いますが、気持ちとしては、あの「5分」の延長です。

  • 人より少し早く来て、仕事の準備をしておく
  • みんなが帰ったあとに、ちょこっと掃除をする
  • みんなが「ここまで」で終わらせるところを、もう1つ先まで進めてみる
  • 家に帰ってからも、段取りや改善のことを考える
  • 資格を取ってみたりする

先に断っておくと、これらは当時の私が自分で選んでやっていたことです。早出や居残りそのものを勧めたいわけではありません。

こうして振り返ってみると、今につながっていることが結構あるように思います。しんどい日もありましたが、誰かに強制されているわけではなかったので、そこまで苦にはならなかったように思います笑。

このうち4つを図にすると、こんな感じです。

私の「人より5分」の実例。少し早く来て準備、帰りにちょこっと掃除、一つ先まで進めてみる、家でも考える・学ぶ

念のため、もう一度書いておきます。会社に言われてやっていたことではありませんし、サービス残業をすすめているわけでも全くありません。職場のルールや契約の範囲内で、無理のない範囲でやる、というのが大前提です。誰かに強制されたり、当たり前だと押しつけられたりするようなことがあったら、それはまた別の問題だと思っています。もちろん、就業時間内のちょっとした隙間時間を使って「もう一つ先まで進める」だけでも、立派な5分だと思います。

余談ですが、私が会社に入ったころは、「若手は30分以上前に来て掃除しろ」と言われることもありました。今なら、さすがに「それは強制ですよね」という話になると思います。いま思えば笑い話ですが、そういう時代もあったんですね。

今の職場でも、続けていること

今の職場は、作業が終わるとパッと切り上げて休む、という雰囲気があります。それが良いとか悪いとか、そういう話ではありません。

私も、休むときは休みます。そのうえで、この5分の話が性に合っているみたいで、掃除をしたり(『挨拶と掃除』という記事にも通じる話です)、機械のプログラム(NCプログラム)を編集したり、法律が変わったところを調べたり、後輩のために資料をまとめたりというようなことをしています。特別なことをしているつもりはなく、気づいたらやっている、という感覚に近いです。家に帰ってからの時間だと、最近は後輩のために「NC手帖」という小さなアプリをAIと一緒に作ったりもしました(この話は別の記事に書きました)。これも、あの「5分」の延長なのかなと思っています。

休むことを、削っているわけじゃない

ここで1つ、はっきりさせておきたいことがあります。この「5分」は、休憩や睡眠を削る話ではありません。

しっかり休んで、体調を整えたうえでの5分です。無理に削った5分ではないんです。休めるときにちゃんと休むのは大事なことです(このことは『休めるときに、しっかり休む』という記事にも書きました)。休むことと、積み重ねることは、矛盾しないと私は思っています。

5分の余裕が、安全にもつながる話

似たような言葉に「5分前行動」という考え方もありますが、あれは主に時間を守る・準備をしておく心構えの話です。Oさんが言った「人より5分努力しろ」は、努力の積み重ねの話なので、ちょっと意味合いが違います。誰かの名言や社訓というより、現場で自然に言い伝えられてきた言葉、だと私は捉えています。

ただ、日々の「5分の積み重ね」で段取りがよくなると、結果として当日の作業に「5分の余裕」が生まれます。そしてこの余裕が、安全の話ともつながっていると私は思っています。一般財団法人中小建設業特別教育協会が紹介している、独立行政法人労働安全衛生総合研究所の高木元也さんによるヒューマンエラーの分類の中に、「近道・省略行動本能」というものがあります。時間に追われて焦っていると、手順を省略する近道行動に走りやすい、という考え方です(建設業向けの資料ですが、この考え方自体は業種を問わず言われているものです)。

たとえば機械の段取り替えで時間に追われているときや、終業時間ギリギリで焦っているときほど、安全通路を通らず近道をしてしまったり、確認を1つ飛ばしてしまったり――現場では、そういう場面が実際にあると思います。5分早く動いて、心と時間の両方に余裕を持っておくと、こうした近道行動をせずに済む場面が増える――あくまで私の体感ですが、そう感じています。

5分の余裕が安全をつくる対比図。余裕がある日は手順どおり確認でき、ギリギリの日は焦って近道したくなる

まとめ:まず今日、5分だけ

「人より5分努力しろ」というOさんの言葉は、魔法の数字を教えてくれた言葉ではなく、積み重ねるかどうかの大切さを教えてくれた言葉だったんだと、今は思っています。本当に単純な掛け算なのに、10年分まで並べてみると、ずしりと効いてくる言葉でした。Oさんがあのとき伝えたかったことが、今になってよく分かります。

まず今日、何か1つだけでいいと思います。少し早く準備するとか、ちょこっと掃除するとか、一歩だけ先に進めてみるとか。毎日でなくても、できる日にできることを、少しずつでいいと思っています。私自身、あのときOさんにこの話を聞いていなかったら、今の自分とは少し違っていたかもしれません。

1日5分は誤差でも、10年続ければ、はっきりとした差になる。

・工場・現場の安全対策のまとめ → 【保存版】工場・現場の安全対策まとめ

以上、ご安全に!!

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