【現場の言葉】一作業一片付け|「その場を離れるとき」が、片付けの合図

一作業一片付けのアイキャッチ。使い終えた道工具を工具棚の定位置に戻す作業服の女性(その場を離れるとき、その場で) 現場の言葉

こんにちは、もこです。

現場で受け継がれてきた言葉を、私なりに少しずつ書きためている連載「現場の言葉」。今回は、前の職場で先輩たちに教えてもらった一言です。

工場の仕事は、1つの作業だけを黙々と続けられるとは限りません。段取りが変わったり、別の指示が入ったりして、作業の途中で手を止めることもあります。私は、そういう場面で、それまで使っていた道工具(どうこうぐ。工具や道具をまとめてこう呼ぶのが、前の職場での言い方でした)を、出しっぱなしにしてしまったことがありました。それを見た先輩たちに、教えてもらったのが、この言葉です。

この記事でわかること

  • 「一作業一片付け」という言葉の意味と、片付けないと何が起きるか
  • 今も続けている、片付けの対象と区切りの決め方
  • 片付けられないときにやっている、周知とコーンという二手

「一作業一片付け」という言葉

「一作業一片付け(ひとさぎょう・ひとかたづけ)」

言葉自体は、これがすべてです。特に凝った言い回しがあるわけではなく、そのままの意味だと思います。「一作業」は、1つの作業がひと区切りつくたびに、という意味。「一片付け」は、その区切りごとに、使った道工具をその場で片付けるということ。私はそう理解しています。

この言葉は、特定の誰かが最初に言い出した、という話ではありません。前の職場の文化として、先輩たちから教わりました。職場の中で共通語のように使われていた言葉です。似た言い回しに「一仕事一片付け」「ひと仕事ひと片付け」という表記も見かけますが、前の職場では「一作業一片付け」という言い方でした。

片付けないと、何が起きるか

なぜ、その場ですぐに片付けることが大事なのか。前の職場で教わったのは、こういうことでした。

共有の道工具は、使い終えたら戻しておかないと、その道具を次に使いたい人が、必要なときに使えなくなってしまいます。もうひとつ、道工具がそこに置いてあると思っていない人が、通りかかったときに躓いてしまうこともあります。

共有の道工具は、次にそれを使う人のものでもあります。使い終えたら戻しておくことは、次に使う人への、小さな段取りでもあるように思います(作業を始める前の段取りについては、以前『段取り八分、仕事二分』という記事に書きました。今回の話は、その逆――作業を終えたときの話です)。

素直に、腑に落ちました

この言葉を聞いたとき、私はなるほどなと腑に落ちました。難しい理屈ではなく、当たり前といえば当たり前のことなのですが、それを一言にまとめて言われると、すとんと入ってくるものがありました。

掃除や片付けというテーマでは、以前『ベテランと新人で変わらないのは、挨拶と掃除』という記事でも書きました。今回は、その中でも“いつ”片付けるかという一点を、もう少し掘り下げてみます。

今も続けている、片付けの区切り

前の職場を離れた今も、この考え方は続けています。

対象になるのは、道工具や治具(じぐ。部品を固定したり、位置を決めたりするための工具)、台車、図面、フォークリフト、クレーン、スリング(吊り荷をかけるためのロープやベルト)、エアーホースなど、作業のたびに使うもの全般です。ここに挙げたのはあくまで一例で、実際にはもっとあります。

区切りの決め方はシンプルです。その場から一度離れるのであれば、基本的には片付ける。それが、私の中での合図になっています。とくにフォークリフトやクレーン、スリングといった機械・治具まわりのものは、置き場所や扱いを誤ると、それ自体が新たな危険になりかねません。だからこそ、使い終えたらすぐに元の場所へ、という意識は強く持つようにしています。

この区切りは、決まりがあるわけではなく、私なりの決め方です。

片付けの区切りは、その場を離れるとき。対象の例は道工具・治具・台車・図面・フォークリフト・クレーン・スリング・エアーホース。その場を離れるなら、元の場所へ戻す

それでも、どうしても片付けられない場面はあります。そういうときは、片付けられないなりの対応をしています。周りの人に、ここに置いてあると一声かけておくこと。人が通る場所であれば、コーンなどを置いて囲い、そこに何かあると分かるようにしておくことです。

片付けられないときの二手。①周りの人に周知する ②人が通る場所はコーンで囲う

片付けられないこと自体は、責められる話ではないと思っています。現場では、どうしても手が離せない場面が出てくるものだと思います。大事なのは、片付けられないときに、そのままにしないで、知らせる・囲うという次の一手を持っておくことだと思います。

片付けは、その場を離れるとき、その場で。片付けられないなら、知らせる・囲う。

整理整頓(4S)は、転倒災害を防ぐ基本

この「置きっぱなしにしない」という考え方は、転倒災害の防止にも、そのままつながります。

厚生労働省の「職場のあんぜんサイト」には、転倒災害を防ぐ対策として、整理・整頓・清掃・清潔の4S活動が「基本的かつ最も重要な対策」だと明記されています。整理は必要なものと不要なものを区分して不要なものを取り除くこと、整頓は必要なものを決められた場所に、決められた量だけ、いつでも使える状態にしておくことだと説明されています。通路に物が置きっぱなしになっていることは、つまずきの主な原因のひとつです(4Sに「しつけ」を加えて5Sと呼ぶこともありますが、このページでの表記は4Sです。5Sや3定という考え方の全体像は、以前『5S3定』という記事にまとめました)。

同じサイトの転倒災害防止のためのチェックシートには、「身の回りの整理・整頓を行っていますか。通路、階段、出口に物を放置していませんか」「床の水たまりや氷、油、粉類は放置せず、その都度取り除いていますか」という項目があります。忙しい時間帯などは4S活動がおろそかになりやすい、とも書かれています。「その都度」「放置しない」。私なりの区切りも、向いている方向は同じだと思っています。

通路や足元を安全な状態に保つことは、職場として守るべき決まりの背景にもなっています。労働安全衛生規則には、通路や床面を安全な状態に保つことを事業者に求める条文があるほか、「整理、整頓及び清潔の保持」は、新しく現場に入った人が受ける雇入れ時などの安全衛生教育の項目のひとつとしても定められています。精神論ではなく、教育のカリキュラムに組み込まれるくらい、大事にされていることなのだと思います。「一作業一片付け」は、その決まりを、ひとつひとつの作業の区切りに落とし込んだ、現場の知恵のように思います。

転倒災害そのものの実態や、通路まわりの具体的な対策については、以前『工場の転倒・つまずき対策』という記事にまとめましたので、あわせてどうぞ。ちょうどこの記事を公開する10月7日は、厚生労働省の全国労働衛生週間の本週間(10月1日〜7日)の最終日にあたり、転倒・腰痛災害の予防も実施事項のひとつに挙げられています。

まとめ:その場を離れるとき、使ったものを戻す

「一作業一片付け」という言葉は、片付けの仕組みそのものを教えてくれる言葉ではなく、片付けを“いつ”やるかを教えてくれる言葉だと、今は思っています。作業がひと区切りついて、その場を離れるとき。そこが、片付けの合図です。

一度に全部を、完璧にやろうとしなくていいと思っています。まずは、その場を離れるとき、使い終えたものから順に、元の場所へ戻す。それが難しければ、周りに一声かけておく。人が通る場所なら、コーンで囲っておく。それだけでも、次にそこを使う人や、通りかかる人にとっては、大きな違いになるはずです。

先輩たちが私に教えてくれたのは、複雑な仕組みづくりではなく、この一点だけだったように思います。難しい道具も特別な準備もいりません。次にその場を離れるときから、少しずつ試してみてもらえたらうれしいです。

その場を離れるとき、使ったものを戻す。それが「一作業一片付け」。まずは、ひとつずつ。

・工場・現場の安全対策のまとめ → 【保存版】工場・現場の安全対策まとめ

以上、ご安全に!!

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