毎朝の朝礼で「では今日のKY、危険ポイントを挙げてください」と言われても…シーン。誰も手を挙げない。仕方なく、きのうと同じ「足元注意」「指差し確認」をホワイトボードに書く。――あなたの現場でも、こんな風になっていませんか?
KY活動が大事なのは、みんな分かっています。でも毎日やっていると、どうしてもネタが尽きてくる。気づけば「今日も同じこと書いてるな…」と、いつのまにか形だけになりがちですよね。
そこで、AI(ChatGPTやClaude)に今日の作業を打ち込んで「危険ポイントと対策」を一緒に洗い出してもらったら、これがけっこう使えるんです。朝礼のたたき台が、スマホで30秒。今日はその手順と、そのままコピペで使えるプロンプトを全部公開します。
KY活動とは?(そして、なぜ形だけになるのか)
KYは「危険(K)予知(Y)」の頭文字。作業を始める前に、その作業にどんな危険がひそんでいるかをチームで出し合って、対策を決めておく活動です。
もともとは住友金属工業(現・日本製鉄)で生まれ、中央労働災害防止協会(中災防)がゼロ災運動の中で体系化して全国に広めた危険予知訓練(KYT)が下敷きになっています。その訓練を、毎日の作業前に短くやる形に落とし込んだのがKY活動、というイメージですね。現場ではおなじみの取り組みです。
なぜ作業前にやるのか。ここで効いてくるのがハインリッヒの法則です。1件の重いケガの裏には、29件の軽いケガ、そして300件の”ヒヤリ”(傷害には至らなかった出来事)がある、という考え方。
ただ、ここは正確に言っておきます。これは1930年代に多数の労災データから導かれた経験則であって、「1対29対300」の比率そのものは業種や時代で変わります。それでも大事なポイントは変わりません。大きなケガの前には、たいてい小さな異常やヒヤリが積み重なっている。だから、その芽を作業前に拾っておこう、というのがKYの狙いです。
「形だけ」になってしまう正体
でも現実は、毎日やってると形骸化しがち。理由はシンプルで、毎朝ゼロから「今日の危険」をひねり出すのがしんどいからです。
- 毎日同じような作業だと、ネタが固定化する
- 結果、「足元注意」「ヨシ」だけの空欄うめ作業になる
- 書いた本人も「危険を予知した気」にならない
ここがミソで、KYは「書くこと」が目的じゃない。書く前に頭を一回まわすことが目的なんですよね。だったら、ネタ出しの部分だけAIに手伝ってもらえばいい。考えるきっかけ=たたき台を作るのは、AIがめちゃくちゃ得意な仕事です。
ちょうど今は全国安全週間の時季(7月1〜7日が本週間、6月は準備月間)。KYやヒヤリハットを見直すには、いちばんいいタイミングです。
スマホに作業内容を打つだけ。PC不要、エンジニアじゃなくてもOK
「AIって難しそう」と思うかもしれませんが、やることはLINEで友だちにメッセージを送るのと同じレベルです。手順はこれだけ。
手順は3ステップ
- スマホにアプリを入れる … ChatGPTでもClaudeでも、無料でアプリがあります。どちらでもOK。
- 下のプロンプトをコピペして貼り付ける … この記事の次の見出しに全文があります。
- 「作業内容」のところに今日の作業を書いて送る … 「高所での配管取り替え」みたいに、ふだんの言葉でOK。

これで「今日の危険ポイント」と「具体的な対策」が箇条書きでバーッと出てきます。出てきたものを朝礼で見せながら「これ以外にもある?」と一言聞けば、もうそれだけで立派なKYです。
私はプログラミングは未経験のドシロウトですが、それでもAIを相棒にして安全教育のアプリを自作したくらいです。KYのたたき台づくりくらい、肩の力を抜いてできます。コードもPCもいりません。スマホひとつです。
ただし一つだけ先に言っておくと、「たたき台を出すのは簡単」でも「出てきた中身が正しいかを見極めるのは、分かる人の仕事」です。ここは後半の注意点でしっかり書きます。
【全文掲載】そのままコピペで使えるKYプロンプト
ここが今日の主役です。下のボタンでまるごとコピーして、AIに貼り付けてください。最後の「作業内容」のところだけ、今日やる作業に書き換えればOKです。
あなたは製造現場の安全担当(KY=危険予知活動の進行役)です。これから渡す「作業内容」について、その作業を始める前に確認すべき危険を予知し、朝礼でそのまま使えるKYシートのたたき台を作ってください。 【出力のルール】 1. その作業に潜む危険ポイントを5つほど、危険度の高い順に挙げる。 2. 各ポイントは「危険ポイント/なぜ危険か(〜なので、〜になる、の形)/具体的な対策」の3点セットで書く。 3. 対策は必ず"具体的な行動"で書く。「気をつける」「注意する」「徹底する」のような抽象表現は禁止。例:「主電源を切ってロックし、2人で通電ゼロを確認してから手を入れる」のように、誰が・いつ・何をするかが分かる形にする。 4. 対策は「①そもそも危険を無くす→②設備・カバー・センサで防ぐ→③手順・表示で守る→④保護具」の優先順で考える。保護具だけに頼る対策にしない。 5. 最後に、その日チーム全員で指差し唱和する「ひとこと宣言」を1つ提案する。 6. 専門用語は最小限にし、現場の人がすぐ読める平易な日本語で。表ではなく箇条書きで。 【注意】これはあくまで朝礼の"たたき台"です。出力の冒頭に「最終的な危険の確認は、必ず現場の人間が現地・当日の状況を見て行ってください。法令・社内規程・メーカー指定の手順が、この提案より優先されます」という一文を必ず入れてください。器具名や数値(高さ・締付トルク等)を挙げる場合は「一例です。実際は自社のルールと法令で確認してください」と添えてください。 【作業内容】 (ここに今日の作業を、ふだんの言葉で書く。例:高所での配管取り替え作業) ↓
このプロンプトは、次のように作ってあります。
- 「危険ポイント → なぜ危険か → 具体的な対策」がセットで出る
- 対策が「気をつける」で終わらず、具体的な行動で出る(ここ大事)
- 保護具だけに頼らない(危険そのものを無くす → 設備で防ぐ → 手順で守る → 最後に保護具、の順で一緒に考えてくれる)
- 最後にチームで唱和する「ひとこと宣言」まで出してくれる
「気をつける」「注意する」は対策じゃないんですよね。「電源を切ってロックして2人で確認」みたいに、行動で書けて初めて対策。そこはAIにもちゃんと守ってもらいます。
この「①危険を無くす → ②設備で防ぐ → ③手順で守る → ④保護具」という順番は、私が勝手に決めたものではなく、労働安全のリスク低減で基本とされている考え方です。マスクや手袋(保護具)は最後の砦であって、まずは危険そのものを減らせないかを先に考える。ここを押さえておくと、AIの出した対策の”質”も見抜きやすくなります。
実際に出てきたサンプル(高所での配管作業)
試しに「高所での配管取り替え作業(脚立とローリングタワー使用、既設の古い配管を撤去して新しい配管に交換)」と入れてみたら、こんなふうに返ってきました。
※最終的な危険の確認は、必ず現場の人間が現地・当日の状況を見て行ってください。法令・社内規程・メーカー指定の手順が、この提案より優先されます。器具名や数値は一例です。これは朝礼のたたき台です。 ※この作業は、作業計画・手順書にもとづき、必要な資格(高所作業・フルハーネス特別教育など)を持つ人が行い、配管は停止・隔離(ロックアウト/タグアウト=札と鍵で第三者が開けられないようにする)をしたうえで、作業前のKY・作業許可と職長(現場責任者)の最終確認を経ることが前提です。 【作業】高所での配管取り替え作業(脚立・ローリングタワー使用/既設の古い配管を撤去し新しい配管に交換) 1. 墜落・転落 ・なぜ危険か:足場の上で前かがみや背伸びの作業になるので、バランスを崩して落ちる。 ・対策:①可能な範囲は地上で配管を組んでから上げる ②ローリングタワーはアウトリガーを張りキャスターをロック、移動時は人を乗せない ③脚立は天板に乗らず3点支持 ④高さに応じて墜落制止用器具(フルハーネス型)を、メーカー指定の強度を満たす親綱・専用アンカー等の確実な取付設備に、できるだけ高い位置で掛けてから登る。※器具の種類と使う高さは自社のルール・法令で確認。 2. 工具・ボルト・撤去配管の落下 ・なぜ危険か:上で物を扱うので、落とすと下の人に直撃する。 ・対策:①工具は落下防止ロープでつなぐ ②ボルト類は腰袋に入れ手すり上に置かない ③真下を立入禁止にしてコーン・ロープで区画、下に人を入れない。 3. 既設配管内の残留物・残圧 ・なぜ危険か:古い配管に中身(水・薬液・圧)が残っていると、外した瞬間に噴き出す。 ・対策:①撤去前に元バルブを閉め、施錠・表示(ロックアウト/タグアウト=札と鍵で第三者が開けられないように)で隔離してから、抜き・ドレンで中身と圧を抜く ②残圧ゼロを確認し、継手の正面に顔や体を置かずに緩める ③中身が分からない配管は外す前に必ず担当に確認し、高温・薬品・可燃・窒息のおそれがあればSDS確認・換気・適切な保護具・作業許可をとる。 4. 上下同時作業での挟まれ・ぶつかり ・なぜ危険か:上と下で別々に動くと、合図がずれてぶつかる・挟まれる。 ・対策:①上下で作業する場合は声と合図のルールを先に決める ②合図する人を1人に決める ③同じ真上・真下では同時に作業しない。 5. 切創・古い配管のバリやサビ ・なぜ危険か:古い金属配管の切り口やサビで手を切る。 ・対策:①耐切創手袋を着用 ②切断面はヤスリ・養生でバリを処理 ③素手で切り口を触らない。 【今日のひとこと宣言(全員で指差し唱和)】 「足場ロック・工具つなぎ・真下立入禁止、ヨシ!」 ――この出力はあくまで"たたき台"です。手順・器具・数値が自社のルールや法令と合っているかは、必ず分かる人が確認してください。
ご覧のとおり、墜落・落下・残圧・挟まれ・切創まで、それぞれ「なぜ危険か」と「具体的な対策」つきで出してくれます。最後の指差し唱和のひとことまで。これを朝礼で読み上げて、「実際このタワー、キャスターのロックよく緩むよな」と現場の声を足していく。AIのたたき台+現場のリアル。この合わせ技がいちばん強いです。
ここで一つ注意。サンプルに出てくる「墜落制止用器具(フルハーネス型)」は、どの高さでフルハーネス型が必要か、どんな器具を選ぶかが、作業の高さや現場の条件・法令で決まります。AIが出したのはあくまで一例なので、実際の器具選定と使う高さは、自社のルールと法令に合わせて確認してください。サンプルの文言を「正解」として鵜呑みにしないこと。
朝礼でどう使う? そして「AIに任せきり」にしない一線
朝礼での使い方はシンプル
前の晩か、当日の朝イチにスマホで生成しておく。朝礼ではそれを見せながら、
- AIが出した危険ポイントを読み上げる
- 「これ以外に、この現場ならではの危険ある?」と全員に振る
- 出た中から「今日いちばんヤバいやつ」を1つ選ぶ
- その対策を全員で指差し唱和
これで終わり。ゼロから絞り出していた時間が消えるので、朝礼がスッと締まります。私の感覚だと、ダラダラ10分かかってたのが、ちゃんと中身があるのに3分で終わる感じでした(あくまで私の現場での体感です)。
ここだけは守ってほしい注意点
便利だからこそ、はっきり言っておきます。AIはあくまで下書きの相棒で、最終確認するのは現場の人間です。とくに安全に直結する話なので、次の点は外さないでください。
- AIは内容そのものを間違えることがある。実在しない手順や、現場に合わない対策を、自信たっぷりに出してくることがあります(いわゆるAIの”もっともらしい嘘”)。出てきた対策が技術的に正しいか、自社の手順や設備に合っているかは、必ず分かる人がチェックする。これが一番大事です。
- 法令・社内規程・メーカー指定の手順が最優先。AIのたたき台が、法律で決まった手順(高所作業や墜落制止用器具の使い方、停電・残圧処理の社内手順、有資格者がやる作業など)と食い違っていたら、迷わず正式な手順・法令のほうを優先してください。
- AIは現場を見ていない。その日の天気、設備のクセ、人の組み合わせは分かりません。出てきたものを鵜呑みにせず、最後は必ず現場の目で確認する。
- 個人情報・社外秘・図面はAIに入れない。氏名、取引先名、製品の機密、設計図、写真。これらは打ち込まないこと。作業の種類だけ、一般的な言葉で書けば十分たたき台は出ます。あと、会社で生成AIの業務利用ルール(使ってよいサービス・入力禁止の情報など)が決まっている場合は、必ずそれに従ってください。勝手に使ってトラブルになるのがいちばんもったいない。
- 「AIが言ったから」は免罪符にならない。KYは紙を埋める作業じゃなくて、頭をまわす活動。AIはその「考えるスイッチ」を入れる道具だと思ってください。
ちなみに、KY活動そのものを「法律で一律に義務づけ」とまでは言えません。ただ、事業者には働く人の安全に配慮する責務があります(労働安全衛生法)。また、作業の危険性を調べてリスクを減らす取り組み(リスクアセスメント)は、一般的な作業については労働安全衛生法 第28条の2で”努力義務”として求められています(※一定の危険・有害な化学物質などについては、第57条の3で実施が”義務”とされています)。
ややこしい話ですが、要は「危険を先に拾っておく」のは、法律の趣旨ともちゃんとかみ合っているということ。KYはそれをいちばん手軽にやれる現場の知恵です。だからこそ、形だけにせず中身を入れたい。AIはそのための時短ツールです。
応用:ヒヤリハットも、指差呼称の声かけも作れる
このやり方、KY以外にも効きます。
ヒヤリハット報告の文章づくり
「ヒヤリの内容を箇条書きで渡すから、報告書の文章にまとめて」とAIに頼むと、ちゃんとした報告文にしてくれます。「うまく書けないから出すのやめとこ」が減るのが地味に効く。ヒヤリハットは出した人を責めない・短くていい・すぐ出すが鉄則なので、書く手間が下がるのは報告文化にプラスです(もちろん、ここでも社名や個人名は入れない・会社のAI利用ルールに従う、は同じです)。
指差呼称の声かけ・標語づくり
「今日の作業に合う指差呼称のかけ声を3つ」と頼めば、その日の作業に合った唱和フレーズが出ます。マンネリ化しがちな声かけのネタ切れにも便利。安全週間の標語やポスター文言のたたき台にも使えます。
季節や行事に合わせた使い方は、安全週間の取り組み例の記事でも紹介しているので、合わせてどうぞ。
まとめ:AIは「考えるきっかけ」を作る相棒
KY活動が形だけになるのは、毎朝ゼロからネタを絞り出すのがしんどいから。だったら、たたき台づくりはAIに手伝ってもらって、人間は「中身が正しいかを現場の目で確認する」という一番大事な部分に集中すればいい。
- スマホにAIアプリを入れて、プロンプトをコピペ
- 今日の作業を打ち込めば、危険ポイント+具体対策が出る
- 朝礼では「これ以外ある?」で現場の声を足す
- 最終確認は必ず人間。AIの中身は分かる人がチェックし、法令・社内手順・メーカー指定が最優先
- 個人情報・社外秘・図面は入れない。会社のAI利用ルールに従う
これだけで、朝礼の質を落とさずに時間が縮みます。AIに振り回されるんじゃなく、相棒としてうまく付き合う側にまわる。私みたいな非エンジニアでもAIで安全アプリを一本作れたくらいですから、KYのネタ出しは誰でもできます。中身を見極める目だけは、現場のあなたが持っている。まずは明日の朝礼、ひとつ試してみてください。
以上、ご安全に!!

コメント