連休明けの安全対策、初日は「自分の暖機運転」から始めよう

連休明けの朝、工場で体をほぐしてストレッチする作業員。機械だけでなく自分も暖機というアイキャッチ画像 工場生活

お盆休み明け、出勤して最初に感じるのは「なんだか体が重いな」という感覚です。休み中はのんびり過ごしていたのに、いざ現場に立つと、いつもなら考えなくてもできる動作に、ほんの一瞬「あれ、こうだったかな」と引っかかる。私も休み明けはよくそう感じます。

加工のプログラム(NC機械を動かすためのMコードやGコードという指令)を、一瞬「あれ、なんだったっけ」と忘れてしまうこともあります。体も頭も、休みモードからまだ抜けきっていないんですね。「たかが数日休んだだけなのに」と自分でも驚くくらい、感覚が鈍っています。

なぜ連休明けは危ないのか

「休み明けは労災が〇倍に増える」というような統計は、探した限り見つかりませんでした。なので、そういう数字であおるつもりはありません。ただ、休み明けにはいくつかの要因が同時に重なりやすい、というのは事実だと思います。順番に見ていきます。

体がなまっている・無意識の動作に違和感がある

普段は体が勝手に覚えている手順が、休み明けは一つひとつ「確認」しないと出てこない。これ自体が危険信号です。無意識でできていたことに意識を割かないといけない分、他の異常への注意力が落ちている可能性があります。

機械の立ち上げは「非定常作業」にあたることもある

休止していた設備を動かし始める作業は、専門的には「非定常作業(ひじょうていさぎょう)」(いつもの決まった手順ではなく、立ち上げ・立ち下げ・調整・トラブル対応などの作業)と呼ばれます。電源を入れる、油圧や空圧が正常にかかっているか確認する、安全装置がちゃんと働くか確かめる――こうした一つひとつが、普段の「スイッチを入れれば動く」作業とは別物です。労働災害のなかには、この非定常作業中のものが多く含まれるとされています。群馬労働局の「夏季の労働災害防止について」でも、熱中症・感電と並んで非定常作業が取り上げられていて、作業者がその作業に習熟していない場合が多いことが災害の要因として指摘されています。休み明けの立ち上げは、まさにこれに当てはまります。

労働安全衛生規則でも、掃除・給油・検査・修理・調整などで危険のおそれがあるときは機械を止めてから行うこと(第107条)、起動装置に施錠や表示をして第三者に誤って動かされないようにすること(同条2項。ロックアウト・タグアウトに通じる、起動できないよう鍵をかけ札をかけておく仕組み)、運転を開始する場合に危険のおそれがあるときは合図を決めて合図者を立てること(第104条)が定められています。休み明けの立ち上げこそ、これを一つも飛ばさないことが大事だと感じます。

暑さへの体の慣れも、崩れ始めている

8月のお盆休みは、暑さの面でも見逃せません。厚生労働省の「職場における熱中症防止のためのガイドライン」によると、暑さに体を慣らす「暑熱順化(しょねつじゅんか)」には7日以上かけて段階的に慣らしていく方法が挙げられている一方、暑い環境から離れると4日後には慣れの崩れが始まり、3〜4週間でその慣れがすっかり失われるとされています。お盆休みは4〜5日程度なので、ちょうど慣れが崩れ始めるタイミングに重なります。「完全にリセットされる」は言い過ぎですが、休み前より落ち始めていると考えて動いたほうが安全です。

実際、作業の基準になるWBGT(暑さ指数)の基準値も、暑さに慣れている人と慣れていない人とでは差がつけられていて、慣れていない人のほうが厳しめ(低め)の数値になっています。休み明けの自分は「まだ慣れていない人」の側だと考えて、無理のない基準で動くのが安心です。工場の暑さ対策の基本については工場の熱中症対策の記事にまとめています。

生活リズムの乱れ(睡眠不足)も軽視できない

厚生労働省の「健康づくりのための睡眠指針2014」(今は「健康づくりのための睡眠ガイド2023」に改訂されています)では、24時間眠らずに起きていると、認知や作業のパフォーマンスが、お酒(ビール大瓶1本程度)を飲んだときと同じくらいまで落ちるとされています。そこまでの徹夜ではなくても、睡眠時間を削るだけで眠気が増して注意力が落ちることも示されています。休み中に夜更かしが続いていた人は、初日は特に自分の状態を疑ってみてください。

連休明けに潜む四つの落とし穴の図解。一、体がなまっている・違和感がある。二、立ち上げ作業は非定常作業。三、暑さへの慣れが崩れている。四、生活リズムの乱れ(睡眠不足)

今日からできる「自分の暖機運転」

今日からできる自分の暖機運転の図解。体をほぐす・始業点検を丁寧に・足元に注意・変化点の共有・休憩と水分でこまめに整えるの5項目

機械には暖機運転(すぐにフル稼働させず、ゆっくり温度や動きを慣らす運転)がありますよね。1日目は、機械の暖機だけでなく、自分の暖機も。私が休み明けにいつも意識しているのはこれです。

ゆっくり始める、体をほぐしてから動く

初日からいつも通りのスピードを出そうとしない。可能な限りゆっくりと、入念に体をほぐしてから作業に入るようにしています。「早く取り戻さなきゃ」と焦る気持ちはよくわかりますが、そこで無理をするとかえって遠回りになると感じています。

いつもの始業点検を、いつも以上に丁寧に

「休み明けだから特別な法定点検が必要になる」というわけではありません。長期間止まっていた設備の再検査義務は、機械の種類にもよりますが最短でも「1か月を超える休止」からで、お盆休み程度の日数では基本的に当てはまらないからです。ただし、毎日やる決まりの始業点検は、休み明けこそ絶対に飛ばさない。むしろいつもより時間をかけて、一つひとつ確認する価値があると思います。なお、休み中に震度4以上の地震があったときや、屋外のクレーンで瞬間風速30m/sを超える風が吹いたあとは、クレーン各部の作業前点検が法令で義務づけられています(クレーン等安全規則第37条)。台風や地震のあった連休明けは、思い出してください。

足元こそ要注意

私が休み明けに一番ヒヤリとするのは、実は足元です。いつもなら何てことない段差や通路で、気をつけていないと転びそうになる。体が重くて疲れやすいせいか、普段より足の運びが雑になっている感覚があります。しかも疲れやすい分、同じ半日でも集中力の落ちるタイミングが早くやってくる。「まだ大丈夫」と思っているときほど、実は一番危ないのかもしれません。整理整頓や通路の状態については5S・3定の記事も参考にしてみてください。

変化点に気を配り、KYはいつもより丁寧に

非定常作業には、いつもの作業とは別のKY(危険予知、作業前に「どこに危険が潜んでいるか」をみんなで洗い出す活動)が効くと、私は現場で感じてきました。休み明けの立ち上げでは、普段のKYシートをそのまま流用せず、「今日はいつもと何が違うか」を一言加えるだけでも効果があると思います。KYの基本的なやり方はKY(危険予知)とは?の記事にまとめてあります。

水分と休憩で、体の慣れを立て直す

暑さへの体の慣れが崩れている分、休憩と水分・塩分補給は普段より意識的に取ったほうがいいです。「休憩を取る=サボり」ではなく、休むことも仕事の一部だと私は思っています。休み方については休めるときに、しっかり休むの記事にも書きました。ちなみに、新しい熱中症のガイドラインには、連休のあとは休み中の過ごし方を聞き取って、必要なら暑熱順化の期間を延ばしたり追加したりすることも考えられる、と書かれています。「休み明けはゆっくり戻す」は、国の資料にも載っている考え方なんです。

まとめ

連休明けは、体のなまり・非定常作業・暑さへの慣れの崩れ・生活リズムの乱れが重なりやすい時期です。数字であおるつもりはありませんが、要因が重なっているのは間違いないと思います。だからこそ、機械だけでなく自分自身も暖機運転のつもりでゆっくり戻していく。それだけで、防げるヒヤリは確実にあると感じています。

休み明けは、周りの人も同じように体が重いはずです。一人で焦って取り戻そうとせず、お互い「今日は暖機運転で」と声をかけ合えるといいなと思っています。お盆休み、しっかり休んだ分、初日は無理せずいきましょう。

出典

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以上、ご安全に!!

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