【製造業の基礎】粗さ計と標準片、現場では結局どっちを使う?

粗さ計と標準片、どちらを使うか迷う場面のイラスト。作業者が金属部品を手に持ち、机の上に測定スタンドと粗さ標準片が並んでいる 工場生活

図面を眺めていると、隅っこに昔ながらの三角マーク(▽)や、「Ra1.6」みたいな数字が書いてあることがありますよね。前回の記事で、あの数字が「ざらざら・つるつる」を表す表面粗さ(ひょうめんあらさ)を数値にしたものだ、という話をしました。

だけど実際に現場に立つと、次にこんな疑問が湧いてくるはずです。「じゃあこの数字、実際どうやって測っているの?」

私も前にいた工場で、協力会社さんから来てくれた方に「これって、見た目で決めているんですか?」と聞かれたことがあります。正直、最初はちょっと答えに詰まりました。感覚でつかむ部分と、ちゃんと数字で出す部分と、両方あるからです。

今回は【製造業の基礎】シリーズの第2弾として、表面粗さを「どうやって測るのか」を、私なりにかみくだいてお話しします。

この記事でわかること

  • 触針式(しょくしんしき)の粗さ計が、どうやって数字を出しているか
  • 現場で使われる「アラサ標準片」との見比べ方
  • 粗さ計と標準片、現場でどう使い分けるか
  • 測るときに気をつけたいポイント(方向・汚れ・基準の長さ)

測り方は大きく分けて2つあります

表面粗さの測り方は、大きく2つに分かれます。ひとつは粗さ計(あらさけい)という測定器を使って数字を出す方法。もうひとつは、あらかじめ粗さが分かっている見本と見比べる方法です。どちらが正解ということではなく、使う場面が違うだけなんです。(ここでは現場でよく使われるこの2つにしぼってお話しします。光をあてて調べる非接触式の測定方法もありますが、今回は割愛します。)順番に見ていきましょう。

①粗さ計(触針式)で数字にする

現場でよく使われているのが、触針式(しょくしんしき)と呼ばれるタイプの粗さ計です。先端のごく細い、小さな円すい状の硬い素材でできた針(触針・しょくしん。専門的には「スタイラス」とも呼びます)を表面にそっと当てて、なぞるように動かします。

針は表面のミクロな山と谷に合わせて、ごくわずかに上下します。この上下の動きを電気信号に変換して、輪郭曲線(りんかくきょくせん)という波形のグラフを作る。この波形から、うねりのような大きな起伏をより分けて(フィルタ処理といいます)、初めてRaやRzといった数字が計算で出てくる、という仕組みです。

レコード針が溝をなぞって音を拾うのと、ちょっと近いイメージです。針が拾ったごくわずかな凹凸を処理して、粗さを数字にしてくれる測定器。それが粗さ計だと思ってもらえれば大丈夫です。

触針式の粗さ計のしくみを表す4ステップの図解。加工面をなぞる、はりが上下に動く、動きが波形になる、そこから数値を出す
▲加工面をなぞる→はりが上下に動く→波形になる→そこから数値を出す、という流れ

②アラサ標準片(比較用)と見比べる

もうひとつのやり方が、あらかじめ粗さの分かっている見本と、加工した面を見比べる方法です。この見本のことを、現場では「アラサ標準片(ひょうじゅんへん)」とか「標準片」「比較見本」と呼んでいます。正式には比較用表面粗さ標準片という名前で、規格(JIS B 0659-1:2002)の中でも参考として位置づけられているものです。

やり方はシンプルで、確認したい面と標準片を、指や爪で交互になぞって手触りを比べます。見た目で比べるより、触って比べたほうが精度が高いと言われていて、これは私も前職で「爪で覚えろ」と教わった通りだと感じています。

標準片は1種類ではありません。フライス加工の面用、旋盤加工の面用、というふうに、加工方法ごとに何種類も用意されているのが普通です。私が前にいた工場にも、いくつかの標準片が置いてありました。図面の指示に近い加工方法の標準片を選んで、見比べる。そういう流れです。(ちなみに、粗さ計自体を点検する校正用の標準片とは別物です。)

加工した金属の面と粗さ標準片を指で交互になぞって手ざわりを比べているイラスト。標準片が複数並んでいる
▲加工面と標準片を指でなぞって、手ざわりを比べる

現場ではどっちを使う?

じゃあ実際、現場ではどっちを使えばいいのか。ここからは私なりの使い分けの感覚を書いておきます(規格でこう決まっている、という話ではなく、あくまで私の現場感覚として読んでください)。

書類やお客さまへの報告で、きちんと数字を記録に残す必要があるとき。これは粗さ計で測るべき場面です。数字が客観的な証拠になりますから。

一方で、加工した直後にサッと「だいたいこれくらいの粗さになっているな」と感覚をつかみたいだけのとき。作業の途中で何度も粗さ計を持ち出して測るのは、正直あまり現実的ではありません。そういうときに標準片で見比べる、というのが私のやり方です。

数字を記録に残したいなら粗さ計。その場で感覚をつかみたいなら標準片。優劣ではなく、使う場面が違うだけなんです。

ちなみに、この2つは完全に別々の道具でもありません。標準片でおおよその粗さをつかんで、それをもとに粗さ計の測定条件を決める、という使い方もあります。

実は2023年に書きかけて止まっていた自分のメモを見返したら、「最終的には表面粗さ計を用いて計測して合否を決めるのですが、じゃあいざ製造現場で毎回測定するのかというとそうもいきません!」と、当時からまったく同じことを考えていたようです。読み返して、自分でも笑ってしまいました。

測るときに気をつけていること

触針式の粗さ計で測るときに、地味だけど大事な注意点がいくつかあります。

測る前に、対象の面についた油や埃(ほこり)はきちんと拭き取ってください。汚れが挟まったままだと、本当の凹凸ではなく汚れを拾ってしまい、正しい数値が出ません。

今の職場でも、測る前の拭き取りだけは欠かさないようにしています。

次に測定方向です。とくに指示がない場合は、RaやRzがいちばん大きく出る方向で測るのが基本で、旋盤やフライスのように筋目のある面では、それがふつう加工目(かこうめ・削った跡の筋目)に対して直角の方向になります。筋目に沿って(平行に)測ると凹凸を拾いにくく、実際より粗さが小さい、つまり見た目上”きれいな”数値が出やすいからです。(研磨後のような方向性のない面では、この限りではありません。)

測定方向による違いを示す図解。指示がなければ筋目に直角が基本の向きで、筋目に平行に測ると数値が小さく出やすい
▲指示がなければ、筋目に直角が基本の向き。平行だと数値が小さく出やすい

そしてもうひとつ、基準長さ(きじゅんながさ)という考え方があります。これは、粗さを計算するときに区切って使う一定の長さのことです。細かい粗さの面ほど短い基準長さで、粗い面ほど長い基準長さで計算する決まりになっていて、実際に数値を出すための評価長さ(ひょうかながさ)は、特に指定がなければ、この基準長さの5倍を使うのが標準です。

数字だけ聞くと難しく感じますが、要は「細かい面は細かく、粗い面は広めに区切って平均を取っている」という理屈です。前回の記事に出てきた数字で言うと、Ra1.6くらいの面なら基準長さ0.8mm・評価長さ4mm、Ra6.3くらいの面なら基準長さ2.5mm・評価長さ12.5mmが代表的な区切りになります。

項目 粗さ計(触針式) アラサ標準片(比較用)
何がわかるか Ra・Rzなどの具体的な数字 「近いかどうか」の感覚
向いている場面 検査記録・報告書に数字を残したいとき 加工の途中でサッと確認したいとき
かかる手間 やや時間がかかる その場ですぐ確認できる
種類 1台で幅広い面に対応 加工方法ごとに複数用意されている

まとめ

今回お話ししたことを、簡単にまとめておきます。

  • 粗さ計(触針式)は、先端のごく細い針で表面をなぞり、上下の動きを輪郭曲線にして数字を出す測定器
  • アラサ標準片は、粗さが分かっている見本と指や爪で見比べる方法
  • 記録に残したいなら粗さ計、その場で感覚をつかみたいなら標準片
  • 測るときは油・埃を拭き取ってから、加工目に直角の方向で

まず1つだけ覚えておくなら、「粗さ計は数字を出す道具、標準片は感覚をつかむ道具」という違いだけで十分です。図面の三角ひとつ、数字ひとつにも、ちゃんと理由があります。私自身、前職で先輩に教わったことを振り返りながら書きましたが、あらためて言葉にしてみると、けっこう奥が深いなと感じました。

図面の三角一つにも、ちゃんと理由がある。粗さ計も標準片も、覚えておくときっと現場で役に立ちます。

出典・参考にした資料

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以上、ご安全に!!

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